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第7位（28ポイント）
『淋座敷空慰【余録】』 ルネッサンス吉田
『淋座敷空慰【余録】』（※Kindle版のみで発売）
ルネッサンス吉田 茜新社
吉行零は、かつての「開高十三」という名を捨てて生きていた。ある日、零はゴミ捨て場に倒れていた少年・二三（つぐみ）を拾う。二三は、かつて零が弄んで捨てた美少年「深沢」に瓜二つ。二三は復讐に現れた深沢なのか？ 真相はわからぬまま、やがて零と二三は関係を持ち――。
ヒリヒリするコミュニケーションのすれ違い、ぶつかりあいだったはずが、いつの間にかせつない気持ちの往還になり、ハードめなエロ描写にもかかわらずなぜか淡い印象を残す。そんな作者のデビュー作『茜新地花屋散華』の続編『淋座敷空慰』、その単行本巻末に収録されていた「【余録】」が待望の電子化。難解と言われた前作に比べて、文字数が減り「わかりやすくなった」という声もあった本編から、さらに言葉少なに、静かに屈折した感情の機微が描かれる。
オススメボイス！
■ルネッサンス吉田先生独特の、淡々としながら、狂気や性や孤独や焦燥、色濃い人間のにおいを感じさせる描写に感嘆する（こいズミ／ライター）
第8位（22ポイント）
『ストロベリー・ゴー・ラウンド』 カネタケ製菓
『ストロベリー・ゴー・ラウンド』
カネタケ製菓 秋田書店
くーやん、戦艦、ぜらちんは、お嬢様学校「聖カサリナ女子学園」にかよう3人組。お嬢様学校といっても、くーやんはちょっと元気すぎる変人（ナチュラルに「いまストーカーしてる」と発言）、戦艦は武闘派でゲーマー、ぜらちんは童顔なのに発想がややアダルト方面……と、だいぶ「お嬢様」のイメージからかけ離れている。そんな3人がかしましくガールズトークをしながら「もういい結婚まで彼氏いなくていい」などと本音をぶちまけまくる。
変人だらけの楽しい青春ものと思いきや、「普通ってなに？」という悩みに向きあうナイーブな展開が共感を誘う。爆笑しながら読み進めていくと、なぜか微妙にラブストーリーが展開していて、まさか「フィボナッチ数列」の話でグッとくるなんて！
オススメボイス！
■第1話から「合コン行っただけで孕みそう」とか「わたし一生処女なのかな」とか、閉鎖的女子コミュニティ感あふれるキーセンテンスがド直球で胸に響いた。いやぁ～、やっぱりこういう青春時代もなかなか貴重な文化ですよね（自分もその文化人としての発言ですが）。痛みと苦味をともなう青春、楽しい（はろるどキサラギ／フリー編集者）
第8位（22ポイント）
『タイムスリップオタガール』 佐々木陽子
『タイムスリップオタガール』
佐々木陽子 ほるぷ出版
アラサー腐女子はとこは、イベントの帰りに電車事故で死にかける。さまざまなオタクな念のおかげか、なぜか中学生時代にタイムスリップ（精神のみ）。マンガ禁止令を目前に、お母さんに対して「実は30歳なんだ」と告白するが信じてもらえず…。
中学生活を大いに満喫するはとこ。同人誌を買うお金を稼ぐために、未来から唯一持ってくることができた「画力」を武器にマンガ誌の賞金を目指すことに。大人の心を持つ中学生ならではのはとこの行動が、大人読者の胸を打ちまくる。
オススメボイス！
■30歳の分別をもってすれば、中学生時代のトラブルもなんのその。これも一種の成長物語か。主人公は、1996年にタイムスリップしたが、自分なら1983年にゆきたい、『装甲騎兵ボトムズ』『聖戦士ダンバイン』『魔法の天使クリィミーマミ』などを見まくるのだ（廣澤吉泰／ミステリコミック研究家）
第8位（22ポイント）
『未完成ピアニスト』 筒井美雪
『未完成ピアニスト』
筒井美雪 白泉社
白城音楽高等学校ピアノ科の彩坂二葉は、生まれつき極度のあがり症。ひとりの時はちゃんと弾けるのに、人前では手が震えて全然ダメ。一ノ宮王輝は、17歳にして国際コンクールで優勝し「皇帝」と呼ばれる先輩。二葉の練習にしつこくつきまとう王輝は、「皇帝」らしく「この学校でうまいと思ったのは君だけだよ」と言いきる。機械のように精確にピアノを弾く「完璧女王」園田三咲との2台4手で「トルコ行進曲」を弾ききった二葉は学祭で学年代表に選ばれて……。
音楽家一家に生まれ、早くから天才として扱われてきた一ノ宮先輩が、二葉の「楽しい」「好き」という気持ちをこめた音に惹かれ、二葉を特訓。二葉は才能を開花させ、2人の間も近づいていくのかな……というドキドキがたまらない。ピアノを弾く楽しさが伝わってくる作品。
オススメボイス！
■才能はあるがあがり症の少女を先輩である天才ピアニストが導いていく、というありそうな設定の物語だが、それでも読ませるのが筒井美雪のうまさである（廣澤吉泰／ミステリコミック研究家）
■技術はあるのですが、極度のあがり症でうまくピアノが弾けない主人公が、俺様気質の学園のアイドル的存在のピアニストにしごかれつつ、上達していくストーリーです。作者さんの2冊目のコミックスのようですが、かなりおもしろいですので、これからが楽しみですね。ちゃんと読んでいて「音」が聞こえてきますので、音楽マンガが好きな方にはオススメかと思います（種村理沙／KYTIMKYM管理人）
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