日本人がフランス革命に詳しいのは『ベルばら』のおかげ、とも言われる伝説の名作『ベルサイユのばら』。オスカル、アンドレ、マリー・アントワネット、フェルゼン…綺羅星のごとく居並ぶ華麗なキャラクターたちに、今も心ときめく読者も多いだろう。40年ぶりの最新刊では、ジェローデルのほか、アンドレの子ども時代(エピソード1)やフェルゼンのその後(エピソード3)が描かれ、本編の世界がポジティブに拡大されている。
アランの「その後」を描いた「エピソード4」は、アランやベルナールら、『ベルばら』のキャラクターも登場する池田理代子先生の代表作『栄光のナポレオン -エロイカ-』と『ベルばら』とのミッシングリンクを埋める物語だ。
アランが抱いた2つの愛、オスカルへの愛と妹への愛が、彼のなかでいかに昇華されていったのか? オスカルもアンドレもいないパリで彼は思う。
「夥しい血であがなわれたあの日の勝利……もうこれ以上の流血はごめんだと思っただけだ」。
しかし彼は同時に新たな血塗られた歴史を予感してもいた。最後のコマは皇帝の座についたナポレオンの姿である。これを機に『栄光のナポレオン -エロイカ-』もぜひ読み返してほしい。
4話いずれにも独特の余韻があり、『ベルサイユのばら』という大きな物語を補完しながらも、さらなる想像の余地を提供してくれるのが、なんとも心憎い。
巻末のインタビューで「あと何作くらい描いていただけるのでしょうか?」と問われた池田先生はこう答える。
「うーん、わかりません(笑)。でも、この感じだとコミックスもう1冊にはなるのかもしれませんね」。
期待して待とう。
『ベルサイユのばら』担当編集者の鈴木秀幸さんから、コメントをいただきました!
<文・小田真琴>
女子マンガ研究家、マンガレビュアー。男。学生時代に片思いしていた女子と共通の話題がほしかったから……という不純な理由で少女マンガを読み始めるものの、いつの間にやらどっぷりはまって遂には仕事にしてしまった。「SPUR」(集英社)にて「マンガの中の私たち」、「婦人画報」(ハースト婦人画報社)にて「小田真琴の現代コミック考」、Webマガジン「サイゾーウーマン」にて「女子マンガ月報」を連載中。