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『ベルサイユのばら』(池田理代子)ロングレビュー! 40年の時を超えて動きはじめたマリー・アントワネットの時間

2014/10/15


記念すべき伝説の始まり。連載当時(昭和47年)は、少女マンガ誌で歴史ものを描くことは大反対だったという。

記念すべき伝説の始まり。連載当時(昭和47年)は、少女マンガ誌で歴史ものを描くことは大反対だったという。

日本人がフランス革命に詳しいのは『ベルばら』のおかげ、とも言われる伝説の名作『ベルサイユのばら』。オスカル、アンドレ、マリー・アントワネット、フェルゼン…綺羅星のごとく居並ぶ華麗なキャラクターたちに、今も心ときめく読者も多いだろう。40年ぶりの最新刊では、ジェローデルのほか、アンドレの子ども時代(エピソード1)やフェルゼンのその後(エピソード3)が描かれ、本編の世界がポジティブに拡大されている。
アランの「その後」を描いた「エピソード4」は、アランやベルナールら、『ベルばら』のキャラクターも登場する池田理代子先生の代表作『栄光のナポレオン -エロイカ-』と『ベルばら』とのミッシングリンクを埋める物語だ。

アランが抱いた2つの愛、オスカルへの愛と妹への愛が、彼のなかでいかに昇華されていったのか? オスカルもアンドレもいないパリで彼は思う。
「夥しい血であがなわれたあの日の勝利……もうこれ以上の流血はごめんだと思っただけだ」。
しかし彼は同時に新たな血塗られた歴史を予感してもいた。最後のコマは皇帝の座についたナポレオンの姿である。これを機に『栄光のナポレオン -エロイカ-』もぜひ読み返してほしい。

当時は子どもだった私たちだが、今では大人買いができるじゃないか! 本編すべて購入して、オスカルさまたちの激しく美しい生き様をもう一度……。

当時は子どもだった私たちだが、今では大人買いができるじゃないか! 本編すべて購入して、オスカルさまたちの激しく美しい生き様をもう一度……。

4話いずれにも独特の余韻があり、『ベルサイユのばら』という大きな物語を補完しながらも、さらなる想像の余地を提供してくれるのが、なんとも心憎い。 巻末のインタビューで「あと何作くらい描いていただけるのでしょうか?」と問われた池田先生はこう答える。
「うーん、わかりません(笑)。でも、この感じだとコミックスもう1冊にはなるのかもしれませんね」。
期待して待とう。


『ベルサイユのばら』担当編集者の鈴木秀幸さんから、コメントをいただきました!

集英社 マーガレット編集部:鈴木秀幸

雑誌「マーガレット」が50周年を迎える際に、池田先生に何かコメントをいただけないかご相談させていただいたのですが、すると先生から「せっかくならば、コメントではなくマンガを描きたい」という、まさかのご提案をいただきました。

そうして誕生した新作エピソードは、初掲載の際、売り切れの書店が続出し、読み逃したという方のために、カラー扉の描き下ろしと、出だしの4Pにカラー着彩していただき、再掲載をするという異例の事態に。

またコミックスが発売された際も、発売日当日に大重版が決まるなど、改めて『ベルサイユのばら』という作品の根強い人気と40年ぶりの新刊ということへの反響の大きさに驚いております。

池田先生が「40年分の人生を経た今だからこそ描けた」と

おっしゃる作品の深みの部分を楽しんでいただければと思います。



<文・小田真琴>
女子マンガ研究家、マンガレビュアー。男。学生時代に片思いしていた女子と共通の話題がほしかったから……という不純な理由で少女マンガを読み始めるものの、いつの間にやらどっぷりはまって遂には仕事にしてしまった。「SPUR」(集英社)にて「マンガの中の私たち」、「婦人画報」(ハースト婦人画報社)にて「小田真琴の現代コミック考」、Webマガジン「サイゾーウーマン」にて「女子マンガ月報」を連載中。


単行本情報

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