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『ガールズ&パンツァー 最終章 第1話』レビュー! ついに最終章…… 大洗女子が挑む今度の相手は、あの伝説的少女マンガのキャラクター(らしき女子)がフランス戦車で大暴れ!?【あのアニ】

2017/12/22


「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。

アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の人気企画!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしてくるけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しめのマンガガイドです。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品を紹介! そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!

今回紹介するのは、『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話

華道や茶道のような位置づけで「戦車道」が女子のたしなみとされる架空の世界で、戦車に乗った女子高生が試合をして打ちあいをくりひろげるアニメ『ガールズ&パンツァー』。
少女青春ドラマ・スポーツ部活ものの骨格を、緻密な考証が支えるミリタリ―系の題材で肉づけする大胆な作風が反響を受けた本作は、2012年のテレビシリーズ本編を皮切りに、OVAや各種特典映像、ドラマCD、マンガ化や小説化など派生コンテンツを経て作品世界を拡げ続け、2015年には劇場版が公開されるまでになった。

そして、2017年12月9日。
ついに有終の美をかざる「最終章」シリーズの劇場上映がスタート。
全6話予定の第1話なのでまだ先は長いが、映画館を訪れるファンの感慨深さはひとしおだ。
劇場版の時と同じく、「もう見た?」ではなく「何回見た?」と話しあうコアなリピーター層も少なくない。

まずは、大きなネタバレにならない範囲であらすじを紹介しよう。

全国大会と大学選抜チーム戦で2度にわたり廃校をかけた戦いに勝利をおさめ、母校存続を成功させた大洗女子学園戦車道メンバーの面々。
ようやく事態が落ち着き、生徒会では3年生から2年生への引き継ぎがおこなわれた矢先、“ある問題”が浮上する。それを解決する手段として主人公・西住みほが思いついたのが、「無限軌道杯」という戦車道大会への参加だった。
学園艦の奥底で発見された9両目の戦車を加えて新たなチーム編成で挑むみほたちだったが、事前の下調べでは楽勝と見こまれていた初戦の相手「BC自由学園」の思わぬ策にハマり、一転ピンチ……という流れである。

問題を解決するため、西住みほ(右)は、再び戦車道大会への出場を提案する。しかし初戦の相手に思わぬ苦戦を強いられて……。


いやー、最初は導入編でおとなしい内容かと思いきや、いきなりめちゃくちゃ盛りあがってるんですけどー!?

そんな本作を手がけたのは、テレビシリーズ、劇場版から続投の超実力派スタッフたち。
監督の水島努はガルパン本編以降も、アニメ業界の内幕を描いた『SHIROBAKO』をはじめ、つねに異色かつハイレベルな作品を世に送り出しつづけ、その知名度を盤石なものとして改めて最後のガルパンへと臨んでいる。
脚本の吉田玲子はさまざまな媒体でガルパンについて語るインタビューを見るに、監督の意向を汲みながらキャラクターひとりひとりの動機と行動を適切にとらえる視界のクリアさにおそれいるが、今回もそれがいかんなく発揮されている。
メイン声優陣も西住みほ役の渕上舞を筆頭に安定した演技で盛りあげてくれるうえ、大洗女子の新キャラ担当声優陣は大半がほかの名前ありキャラとの兼役なので「あのキャラの声優さん、こんなキャラも演じられるんだなぁ」とプロの引き出しに感心する楽しみもある。

第1話は50分弱、テレビアニメ2話ぶんの尺だが、その情報量はとてつもなく多い。
大洗学園艦の内部構造をさりげなく紹介しながら初登場のキャラクターたちをビシっと立たせるまでの展開があざやかに、かつ非常にコミカルに描かれ、試合パートへの地ならしをする手際がおみごとというほかない。それをとおして、公式の宣伝フレーズ「彼女たちは何のために、誰のために戦うのか――?」の意味を理解した観客は「そ、そのためかー!(笑)」と膝を打つことになるのだ。

実際、「廃校を阻止する」という動機づけは2回も使われたので、また同じことをやればしつこくなってしまうところ。
では今回どうしたのかといえば、「特定のひとりの事情を解決するため立ち上がる」という切り口にしてきたのだ。

既存作では「ひとりはみんなのために」だった。
対して、今度は「みんなはひとりのために」というわけだ。これはうまい。
「最終章」という看板は、作品だけでなく、劇中の登場人物にもかかっている。具体的には、3年生の卒業が近いという状況がドラマを動かしているということだ。
学校を守っても、生徒はいずれ卒業し、顔ぶれは移り変わっていく。最上級生には具体的な進路が示され、後輩が自分なりに役目を引き継いでいく。そうして新たな戦車道が生まれる予兆が、大洗女子以外の高校もふくめてちりばめられているのだ。

テレビ版・劇場版は廃校を阻止する、つまり守りと維持の物語だった。しかし、上に述べたような意味から、今度は「変化」の物語になっている。
最終章……終わりというものは、新たな始まりのうぶ声でもあるのだ。

おなじみのキャラのなかで、今回とくに存在感が光っていたのは生徒会長を引き継いでおもしろかっこいいところを見せてくれる華さんと、あとはなんといっても劇中つねに困り続けている桃ちゃん先輩だろう。
もうね、見ながらずっと「しっかりして桃ちゃん! 落ち着いて桃ちゃん! 桃ちゃん~~!!」と心のなかで叫び続けてましたよ、ええ。

劇場版に続き、苦労人キャラを発揮する河嶋 桃。困り続ける彼女にも注目!!


また、事前に「謎の新キャラ」とされていた少女を筆頭とする5人も一発で性格がつかめる強烈な造形。
どういう立場の生徒なのかと思ったら、水兵帽をかぶっているのがポイントだ。

対戦相手の「BC自由学園」は、アニメ版で人物が直接登場するのはこれが初。
戦車はARL44やFT-17などのフランス籍、校風もフランス風、そのうえ学校名は「ヴィシー政権」と「自由フランス」から語呂をとったと思われる、フランスづくしの学園だ。
校名に2つの元ネタをもつ構造がそのまま人間関係の軸で、しかも試合展開のキーにもなるのがおもしろいのでよく注目してほしい。

BC自由学園のソミュアS35。総合性能に優れた戦車で、みほたちも苦戦必至!?


本作を劇場まで足を運んで見る甲斐があるのは、戦車戦の迫力を大画面で目に見られるだけでなく、すさまじい“音”を肌で感じられるからでもある。
4DXではない通常上映でさえ身体を突き抜けるような衝撃を感じられ、シネコンだと場面によっては砲撃や走行音が隣のシアターまで壁越しに聞こえてしまうのではないかと心配になるほど貫通力の高い音響に包まれる体験はやみつきになることうけあい。

『ガルパン』といえば、音響も楽しみのひとつ。砲撃や走行音など、本作のそれは衝撃まで感じられるほど。


さあ、映画館へパンツァー・フォー!!!

『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話を観たあとに……

今回、『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話をさらに楽しみたいアナタに、読んでほしいマンガ作品を紹介しちゃいますよっ。

『リボンの武者』 野上武志・鈴木貴昭(画) ガールズ&パンツァー製作委員会(作)

『リボンの武者』 第1巻
野上武志・鈴木貴昭(画) ガールズ&パンツァー製作委員会(作) KADOKAWA/メディアファクトリー ¥552+税
(2015年2月23日発売)


ガルパンのテレビ版から見て少し後の時系にあたるスピンオフ作品。
本編の公式なチーム戦に対して、こちらはほとんど野良試合に近い単体対決の「タンカスロン(強襲戦車競技)」に挑む少女たちを描いたハードな内容だ。
このなかで「BC自由学園」が登場し、派閥構造とそのなりたちがくわしく言及されている。
ただし、アニメ最終章とは異なる説明になっており、パラレルなものと受けとるのがいいだろう。

『ガールズ&パンツァー 激闘! マジノ戦ですっ!!』 才谷屋龍一(画) ガールズ&パンツァー製作委員会(作)

『ガールズ&パンツァー 激闘! マジノ戦ですっ!!』 第1巻
才谷屋龍一 KADOKAWA/メディアファクトリー ¥552+税
(2015年3月23日発売)


これもテレビ版の幕間にあたるスピンオフ。本編の序盤で聖グロリアーナに惜敗した大洗女子が、実力をつけるため再び練習試合に臨む。
試合相手の「マジノ女学院」戦車道チームはフランス戦車で構成されたチームということで、アニメ最終章の「BC自由学園」と共通項がある。

『ガールズ&パンツァー 最終章』のほかに、このマンガもおすすめ!

『ベルサイユのばら』 池田理代子

『ベルサイユのばら』 第1巻
池田理代子 ¥410+税
(1972年11月30日発売)


いわずとしれた、激動のフランス革命期を題材とした少女マンガの金字塔。
「BC自由学園」のマリー、安藤、押田は、それぞれ本作に登場するマリー・アントワネット、アンドレ、オスカルを元にしている?

映画情報:『ガールズ&パンツァー 最終章』第1話

■上映情報
公開日:全国公開中
配給:ショウゲート

■CAST
西住みほ:渕上 舞
武部沙織:茅野愛衣
五十鈴華:尾崎真実
秋山優花里:中上育実
冷泉麻子:井口裕香
角谷 杏:福圓美里
小山柚子:高橋美佳子
河嶋 桃:植田佳奈
ほか

■STAFF
監督:水島 努
脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督:杉本 功
考証・スーパーバイザー:鈴木貴昭
キャラクター原案:島田フミカネ
キャラクター原案協力:野上武志
ミリタリーワークス:伊藤岳史
プロップデザイン:竹上貴雄、小倉典子・牧内ももこ・鈴木勘太
メカ作画監督:伊藤岳史・吉本雅一
美術監督:平柳悟
モデリング原案:原田敬至・Arkpilot
撮影監督:関谷能弘・朴孝圭
編集:吉武将人
3D監督:柳野啓一郎
3DCGI:グラフィニカ
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
録音調整:山口貴之
音楽:浜口史郎
アニメーション制作:アクタス

■公式サイト
http://girls-und-panzer-finale.jp/

■公式twitter
@garupan

<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

単行本情報

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