小学4年生と高校2年生では恋の相手として現実的でなかったけれど、くしくも“同い年”となった2人。とはいえ、そう簡単にこの状況に慣れることができるわけはない。
絃にとっては(千遥には悪いと思いながらも)喜ばしい偶然ではあっても違和感があるのは当然だ。この違和感がしっかりと描写されているのが、1巻の大きな読みどころである。
7年間もの間眠っていたことで、かつての同級生たちに置いていかれたような気持ちになっている千遥の心の内。
今では弥太郎を正面から怒鳴りつけるくらい強くなった絃の姿もまた、7年の空白を千遥に突きつけることになっているのもせつない。
絃は7年間千遥に会えなかった間もずっと彼を思い続けていたし、強くなったとはいっても本質的な性格は変わっていない。それでも、千遥と同級生という立場になれば関係性に変化が生じるのがおもしろいところだ。ずっと「憧れのお兄ちゃん」だった彼に、絃が勉強を教えることになったり――。同級生同士の立場となればこれからも自然と違う部分が見えてくることになるのだろう。
一方の千遥が7年間止まっていた自分と、その間に変化した環境をどのように受け止めていくのか。また、敵いそうもない相手だった千遥と“競える立場”になった弥太郎がどんなアクションを起こしていくのかが今後楽しみだ。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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