アゲ太郎にクラブの楽しさを伝授する忍堀さん(しぶかつ出入りのおしぼり業者)にレコ屋「Digger's」店主の溝黒さん、師匠のDJオイリー、ライバルのDJ屋敷蔵人、そして宇田川町商店街の幼なじみチーム……といったアゲ太郎を取り巻く人物も、『キン肉マン』ばりのキャラ立ち。
それぞれクセはあれど愛すべきマインドの持ち主で、イヤなヤツはひとりも出てこないのも、爽やかな読後感のヒミツだ。
斜めカーブな作品かと思わせて、夢、情熱、努力、勝利、成長、恋、友情、家族……といった「ジャンプ=王道少年マンガ」の直球テーマを、真正面からキッチリ打ちにいってるあたりも、好感度大。
作者の2人は、本作が初の連載作品。色眼鏡のないフラットな目線でクラブカルチャーの魅力を少年読者にもわかるようにポップに描きつつ、唯一無比のミラクルな味わいを生み出していて、心から素直に応援したい気持ちになってくる。
好きなことに夢中になることの尊さ、プロの仕事の厳しさ、それらを両立することの困難さと楽しさ……。そんな大人も(だからこそ)つい忘れがちなコトを教えてくれる、最高の一冊。
ぜひ、『サイタマノラッパー』の入江悠監督あたりで映画化希望!
『とんかつDJアゲ太郎』著者のイーピャオ先生&小山ゆうじろう先生から、コメントをいただきました!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69