とっとと地元を離れればいいのに、“まめ”は銭湯を経営する実家に留まり、聡太も近所で喫茶店を経営している身。2人はいつでも顔を合わすことのできる距離にいるのだ。
こうなると片想いを強制終了するのが、なかなか難しい。
本来はそれが「聡太の結婚」であったはずなのに、春子の急逝でふりだしに逆戻り。聡太と春子の娘・優ちゃんも、すっかり“まめ”になついており、はたから見れば再婚の障害はほぼ皆無である。
ただ、いかんせん聡太にその気がない。
嫌いになるきっかけでもあればいいが、父性を備えた聡太は、どこまでも優しい。脈ナシだということを改めて“まめ”に伝えると同時に、好きだという感情が理屈では割り切れないことも思いやるのだ。
本作には“まめ”以外にも、恋意地の張ったキャラクターがどんどん登場する。みな片想いをこじらせながら、それでも毅然と前を向いて進んでいく。
どのエピソードも切なくて、たまらなく愛おしい。そんななか、一向に次の一歩を踏み出せない“まめ”の片想いだけが、別格の強固さを誇っている。
一方、突如帰国した“ゆめ”の再登場で、聡太も初恋の種火をくすぶらせそうな予感。「あたしなんて、お呼びじゃない」とあきらめたふりをして、まったくあきらめていない“まめ”の恋路ならぬ恋意地が、どのように決着するのか――。
こりゃあ、意地でも見届けないといけませんね。
『こいいじ』著者の志村貴子先生から、コメントをいただきました!
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。出身地の立川を舞台にした映画『ズタボロ』(橋本一監督/公開中)の劇場用プログラムに参加しております。観てね!
「ドキュメント毎日くん」