教え子と教師の恋愛ということで、当然2人の関係は隠さなければならないのだが、背徳感や緊張感は、そこまで強調されない。
学校でもちょくちょく2人きりになり、ときにはイチャつき、外で逢瀬を重ねることもしばしば(一線は越えないけれども)。「もっとこそこそとしたほうがよいのでは……?」と感じる人も、少なくないだろう。
しかし、私見だが、このマンガの「新しさ」はそこにあるのだ。
世の中と折りあいをつけることを、過剰にドラマティックに描かない。自分たちの思いを、淡々と、力強く、2人は大切にしていく。そこが現代的な、ある種の「タブー」との戦い方なのではないだろうか。
コミカルな描写に吹き出しつつ、2人の純愛を眺めているうちに、俗世のしがらみのなかでついつい忘れてしまう、恋愛の原点にある気持ちを思いだす。
他人が、世間がどう思うかではなく、自分の気持ちをひたすら見つめ、相手への思いを深めていくこと、それが恋であり、愛なのだ……と。気軽に読める、あたりの柔らかい作品だが、表現の芯にあるものは、とても力強い。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei