『塩田先生と雨井ちゃん』
なかとかくみこ イースト・プレス \725+税
(2015年5月18日発売)
単行本の作品紹介に「懐かしさと新しさをあわせもつ才能」とある。
言いえて妙だ。キャラクターの距離感の描写や、エピソードの内容には、「新しさ」がある。描線やコマ割り、描き文字などには、どこか「懐かしさ」がただよう。
『塩田先生と雨井ちゃん』は、そんな新旧の要素が同居している点が味わい深い、一風変わった、でも読み心地のよいラブコメ作品だ。
著者のなかとかくみこは、ウェブを中心に作品を発表するマンガ家。出版社の情報によれば、これまでに二度、商業誌に作品が掲載されている。単行本の形で作品が刊行されるのは、本書が初だ。
主な登場人物は2人16歳の女子高生・雨井やよいと、彼女から愛情を向けられている、29歳の高校教師・塩田嗣春。
ほかの女の子が寄りつかないよう、髪を引き抜いてハゲさせてみようとしたり、脂っこい食べ物を与えて太らせようとしてみたり、やよいの感情表現は独特かつ熱烈であり、そのため2人の関係は、一見、塩田の方が若干気圧され気味な印象を受ける。
しかし、じつのところ、塩田がやよいに向ける恋愛感情もけっこうディープだ。やよいが心をこめて洗ったとあれば、ずぶ濡れのシャツを着こんで校内を闊歩することすら辞さず、バレンタインには口移しでチョコを受け取ることを求められれれば、照れながらも実行に移そうとする。ひと回り以上年長の、大人をしてこれというのは、かなりの入れこみようだと言えるだろう。
ようするに、お似合いのバカップルなのだ。