いまのところ伝奇もの特有の大きな展開は乏しくて地味にも思える。が、“お役所マンガ”としては大満足の内容だ。
図書館で暮らす魁は「死ににくい」以上の特殊能力はない、はぐれ羊でしかない。そんな魁を保護しつつ捜査に役立てる公務員たちは、善意を原動力としながらもしたたかだ。
特にあかりの直接の上司・久保園係長のチャーミングなこと。カタブツな役人を表では懐柔して裏では上層部から圧力をかけ、バーコード頭を気にするでもなく「私の悲観性は髪の毛一本一本に宿って昇天していくんです」と涼しげ。
こういう組織のなかで爽やかに生きる大人になりたかった……。
1巻では70年にわたって(!)オキナガだけを狙う連続殺人犯「羊殺し」の存在が明らかとなったが、2巻では魁の過去と「羊殺し」の因縁にスポットが当てられている。
沖縄戦に投入されてすり潰されるオキナガたちの悲劇、厚生労働省のキャリア・竹之内が幸村を“ナリアガリ”(血液を与えられた者は、適合者だけが不老不死となる)させてしまった後悔の念、それゆえの魁の恋人との別れ…という個々のエピソードは十分に魅力的だが、それらすべてにより紡がれる「不死者がいた架空の日本史」の空気感がたまらなくいい。
戦後すぐの非人道的な人体実験であれ、厚労省に部屋の手配をしてもらうオキナガたちであれ、「この時代の日本はこうするだろうなあ」という納得感が溢れている。
「羊殺し」について進展はあまりないが、このペースだから魁たちと長い付き合いができそうでうれしい。ハッピーエンドになりにくい不老不死マンガだが、公務員パワーでみんなで幸せになってほしいものだ。
『白暮のクロニクル』著者のゆうきまさみ先生から、コメントをいただきました!
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』(太田出版)『超ファミコン』(太田出版)など。
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