そんなこじらせ女子のココロを人生の酸いも甘いもかみわけたオヤジが解きほぐす……てな展開は、同じく「キャリア女性の恋愛・結婚と幸せ」をテーマにした、東村アキコ『東京タラレバ娘』が「30歳過ぎたら自分で立ち上がれ!」と叱咤激励するのに比べると、あまりにご都合主義でヌルく、結局は男の助けを請うてしまう美由紀にイラッとくる人もいるかもしれない。
とはいえ、現実がままならないからこそ、マンガのなかでぐらい「癒されたい」とも思うわけで。西作品は、そんな願望にきっちり応えてくれる「大人のファンタジー」なのだ。
秀逸なのが「白馬の王子様」ならぬ「雑記帳の説教オヤジ」高橋のキャラクター。
世界を股にかけるバリバリの行動力と子どものような無邪気さで、同僚からも部下からも愛される彼は、じつは別れた妻を現在も思い続けている繊細な一面もあり……。俳優で喩えるなら、遠藤憲一とか寺島進といった感じ?
そんなオヤジに「あんた間違ってる!」と本気で叱られたら、枯れ専でなくともグラッと来ずにいられません?
5回目の見合いで、ようやく「この人なら間違いない」と思える相手に出会ったものの、いぜん迷いが振り切れず、「俺と話しててもらちがあかんぞ」と言われながらも、高橋に救いを求める美由紀。
このまま高橋と恋に落ちるのか、はたまた、元カレの一法師(結婚向きかはさておき……ほんとイイ奴!)とヨリを戻すのか、あるいは、高橋が美由紀の死んだはずの父親という昼ドラ的展開もアリ……!?
で、第2巻以降もまだまだ目が離せない!
<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69