主人公は極端に自己中心的な性格ではない。しかし、「人畜無害」を装った態度の中にある傲慢さを見せられて、ハッと自分を振り返らずにいられなくなる。なんら希望を持たずに生きるのだって、その人の勝手といえばそう。いや、だけど「当たりさわりなく生きてる(つもり)」って、やっぱり不誠実だ。喜びや悲しみを感じる感情というものを、唯一持って生まれた人間としては。
いつかすべてがなくなることを知りながらも、明日を信じて生きるのが人間なのだ。そんなことを考えさせられる本書の読後感は、ちょっとディケンズの『クリスマス・キャロル』に似ている。
「死ぬことなんか怖くない」という心境に至るのは難しい。とはいえ、死や老いの存在を忘れて生きるのも、ある意味不健全ではないか。ものすごく怖くなっちゃったら、ひとりで抱えていないで近くの人に話せばいいのだ。「死ぬのが、怖い」って。
『ノストラダムス・ラブ』著者の冬川智子先生から、コメントをいただきました!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。 ブログ「ド少女文庫」