話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『椿町ロンリープラネット』
『椿町(つばきちょう)ロンリープラネット』第1巻
やまもり三香 集英社 ¥400+税
(2015年8月25日発売)
椿町3-1-5。
角の曲がり坂を登ったところにある、椿の見えるクラシカルな日本家屋。
時代小説家、木曳野暁(きびきの・あかつき)が暮らす家である。
父親が借金を背負ってしまったため、ここに住み込みで家政婦をすることになったのが、主人公の大野ふみだ。
「くよくよしたってお金は貯まらないし、まずは銭を稼いでからですよ!」
決意を胸に、木曳野家へ「奉公」にやってきたふみだが――。
『ひるなかの流星』で人気を博したやまもり三香の新連載、女子高生家政婦とクールな小説家をめぐる物語『椿町ロンリープラネット』は、このようにして幕を開ける。
さて。玄関を開けると、いきなり廊下での行き倒れである。
ふみという名前から、ベテラン家政婦だと決めつけていた暁。
また、ふみもふみで、文豪の老人を想像していたため、お互いの第一印象は正直おめでたくないものであった。
ふみはまじめで、(家の事情のためやむをえずそうなったこともあるのだろうが)家事の得意な少女だ。
きっちりとハウスキーピングをこなし、料理もお手の物。
が、仕事に没頭する暁は常に不機嫌で、暁を気づかうふみを邪魔もの扱いする。
しかし幼なじみの担当編集である金石に、ふみは父親が出稼ぎに出ていて、今はひとりぼっちで帰る家もないと聞き、暁の気持ちは変わった。
かくして、2人の間の溝は徐々に埋まり、小説家と女子高生の同居生活はスタートするのだった。