母の奇想天外な表情も見どころだ。小さく描かれた爆笑フェイスを見たくて、何度コミックスを読みかえしたことか。
最終巻ということで手を振る母が描かれた21巻の表紙をまじまじながめていて思ったのだが、彼女はかなりデフォルメされたデザインのキャラクターなのである……。
妙なパーマ、大きな口、二頭身。でも、この姿こそ「うちの母にそっくり!」と感じた人は少なくないはず(じつは筆者も)。
「母」的な要素をぎりぎりまで煮詰めて、しかもかわいくておかしいキャラクターにしてしまう著者・けらえいこの筆力は、やっぱりただごとではない。
21巻のあいだ、日常はまるで結末なんて意識させずに続いていく。
コミックスには最終回以降を語る描き下ろし「最近のあたしンち…」も収録されているが、みんなあいかわらずのようだ。
不穏なことも多い世の中で、タチバナ家の人々が今日もおかしな日常を過ごしているに違いないということは読む側にとって明るくやわらかい希望である。
元気を出したい時にはこの23コママンガはとてもオススメだし、私もこれからも何度も手に取るにちがいない。
<文・横井周子>
ライター、少女マンガ研究家。『池田理代子の世界』、『女子校育ちはなおらない』などに執筆。藤本由香里・福田里香・やまだないと著『大島弓子にあこがれて』ではやまだないとインタビューを担当。