「あの話題になっているアニメの原作を僕達はじつは知らない。」略して「あのアニ」。
アニメ、映画、ときには舞台、ミュージカル、展覧会……などなど、マンガだけでなく、様々なエンタメ作品を取り上げていく「このマンガがすごい!WEB」の新企画がスタート!
そう、これは「アニメを見ていると原作のマンガも読みたいような気もしているけれど、実際は手に取っていないアナタ」に贈る優しいマンガガイド。「このマンガがすごい!」ならではの視点で作品をレビュー、そしてもちろん、原作マンガやあわせて読みたいおすすめマンガ作品を紹介します!
今回紹介するのは、『だがしかし』
ココノツ、おまえ、少女マンガを描いとったんか。
……そんな原作読者的にはちょっとした驚きを感じるだろうシーンから幕を開ける、TVアニメ『だがしかし』1話である。
主人公の鹿田ココノツくんがマンガ家志望だという設定は、原作にもある。しかし、彼の描いているマンガの内容は、はっきりとは明かされていなかった。それがアニメでは、はっきりと描かれるのである。
ともあれ、そんなツカミの描写ではっきりとわかるように、アニメ『だがしかし』は、原作の展開や構図をただそのままなぞるのではなく、きちんと尊重したうえで独自の要素を加味し、アニメ版ならではの『だがしかし』の世界を作り上げようとしている。
さて、ではその「独自の要素」とは、どんなものだろうか? もう少し具体的に見てみよう。
1話を見るかぎりにおいて感じられたのは、「パロディ」と「アクション」だ。ココノツと父親のヨウの小競り合いで、サンドバッグに憎いあンちくしょうの顔が浮かんで消えたり、小◯宙が燃えたりするのはまだまだ軽い方。どこかでみたような、それにつけてもおやつは……なおじさんの登場するCM風映像など、さすがスラップスティック・コメディの快作『ギャラクシーエンジェル』シリーズの仕事で名を馳せた高柳滋仁監督だ……と思わざるをえない、アニメ独自のギャグシーンが多々ある。
そして「アクション」である。
まず、本題に入る前に断言するが、『だがしかし』の魅力の7割くらいは、ヒロイン・枝垂ほたるのエキセントリックなリアクションにある。タイトルが『だがしかし』=「駄菓子・菓子」と掛かっているくらいだから、駄菓子にまつわるうんちくのおもしろさも当然本作の魅力のひとつではあるのだが、あくまでそれはほたるさんの魅力を引き立てるために存在しているのだ、と強く言っておきたい(※編集部注:あくまで、この原稿を書いている偏った萌えオタ個人の見解です)。
さておき、そんなほたるさんの過剰さが生み出す魅力を、アニメではどう表現してくれるのか? これは、アニメ化が決まったときから、筆者にとってとても気になるポイントであった(好きだから)。
今作が選んだのは、マンガという静止画の表現を動く映像に置き換える上で、極めてオーソドックスなやり方のように、1話の時点では見受けられる。つまり、「映像のテンポ感」と「ダイナミックな動き」だ。
ここぞというところで豪快に、画面狭しと動きまわるほたるさん。原作の大胆なキメゴマもときめくものだが、アニメのこれも、勢いが感じられてグッドである。揺れるし。あえて何をかとはいわないが、揺れるのだ。大きなものが。メロンが。ホタルさんの。揺れるんだよ。揺れる。揺れる……(焦点の定まらない目で遠くを見つめる)。
Aパートでのヨウとココノツを相手にした派手な立ちまわりもいいが、やはりまあ、その、Bパートだよ。自転車に乗りながらよそ見をしていたほたるさんが、泥田に落ちたあと、ココノツの幼なじみである遠藤豆・サヤ兄妹の家で、シャワーを借りることになる流れ。そこからの怒涛の展開。露出度が高いなんてもんじゃなく、おしげもなく堂々と全裸をさらしてくれる、いまどき珍しいストレートなお色気っぷりが、じつにすばらしい。
だがしかし! 個人的には、重要なのはその後だ。サヤちゃんから着替えを借り、遠藤家が経営する喫茶店のカウンターで、一息をついているほたるさんのシーン。その借りた着替えというのがTシャツなんだが、おそらく、下に着けてない。何を? みなまで言わすなよ。さすがにそこまでは、同性とはいえ借りられないし。そもそもサイズが違うし。とまれ、着けてないから、こう、動くと揺れる。激しく。ぶるぶると。揺れる。けしからん。ロマンがありあまる感じ。これぞ美少女アニメだ。文句があるか。ありません!(セルフ承認による自己完結)
……あ、そうそう。おまけっぽい触れ方になるけど、サヤちゃんもかわいいよ。デザインはちょいヤンキー入ってる雰囲気だけど、じつはココノツに恋する純情乙女で、奇人変人揃いのこの作品のなかでは珍しい、とっても常識人なサヤちゃん。
そんな感じで、TVアニメ『だがしかし』は、原作の持ち味にアニメならではのおもしろさをたっぷりとトッピングした、気軽に見られて、それでいて満足度の高いスナッキーな感覚の作品に仕上がっている。
散歩の途中、ふらっと駄菓子屋に立ち寄るような、そんな何気ないイメージで、構えずにふらっとチャンネルを合わせてみるなり、録画を再生するなり、配信にアクセスするなりしてみてはいかがだろうか。
きっと、駄菓子のように、クセになるはずだから。
アニメをもっと楽しみたい人はこれをチェックすべし!!
『だがしかし』コトヤマ
『だがしかし』第1巻
コトヤマ 小学館 \429+税
(2014年9月18日発売)
先の展開を知らずにアニメを楽しみたい人にとっては、よけいなお世話かもしれないが、より動画で見るほたるのエキセントリックな動きを満喫するために、原作を読んで予習しておくのもよし。
もしくは、登場する駄菓子を購入しておいて、本作の駄菓子うんちくを聞きながら、食べるのもまた一興? アニメの公式Twitterでは、駄菓子を紹介する「3時のおやつの時報」なるものもつぶやかれているので、こちらもおすすめ。
『神のみぞ知るセカイ』若木民喜
『神のみぞ知るセカイ』第1巻
若木民喜 小学館 ¥400+税
(2008年7月11日発売)
ギャルゲーマニアの主人公が次々とリアルの女の子たちを「攻略」していく「週刊少年サンデー」連載の人気ラブコメ。
アニメ版の監督は本作と同じ高柳滋仁。『だがしかし』の美少女要素に反応したら、マンガ&アニメでこちらを楽しんでみるのもありかも!?
<文・前田久>
1982年生まれ。ライター。通称「前Q」。「月刊ニュータイプ」(KADOKAWA)ほか各種アニメ誌をはじめ、アニメの公式サイト、パッケージブックレットなどの仕事を主に手がける。