そして航海のなか、ついに2人の前に現れる海底帝国の尖兵、ダイオウイカ……はどう見てもオオダコ。
じつはタコに恐怖する真潮は、潜水艦を与えてくれた「ある存在」から、タコをダイオウイカだとウソを教えられていたのだ。恐怖で顔を覆う少年に、昴は彼の股間を触り始め……!?
気になる方はぜひ本編で確認してほしいが、どう見てもショタです、ありがとうございました。
連載誌が成年女性向けの「楽園」だったおかげで、ノーブレーキでお送りしています。
さあ征くぞ! 海底2万ミリメートル(つまり水深20メートル)。
……と、息巻くものの、昴が真潮の耳に吐息を吹きかけたりセクハラをする事情もあるが、この潜水艦は遠くに航海できるよう造られていない。
艦内にトイレもない、狭いのでキッチンもない、七輪を持ちこんだら温度がヤバイことに……。
下世話な話に寄せてギャグっぽくしているが、潜水艦の居住性や航海に必要な「物資」の問題をコンパクトにまとめた「海洋冒険ドラマ」であり「極限環境(?)SF」も成立しているのが、さすがのあさりよしとおマンガだ。
この真潮と昴の2人がクルーに選ばれた理由、それは「秘密が漏れる心配がない」からだ。口が固いんじゃなく、秘密を漏らしても相手にされないタイプ。
真潮の親は何カ月も息子の顔を見たことがないというし、相棒になった昴も学校ではイジメられ、部活もやってなくて友だちが少ないどころかひとりもいない。
「冒険」は家庭に恵まれている人にとってはとても難しい。ふらりといなくなれば家族が心配して、警察に捜索願いを出すだろう。孤立したはぐれ者たちがひとつ屋根の下に暮らし、冷たい本物の家族よりも擬似家族――とは『カールビンソン』以来のあさりのテーマかもしれない。
「海底帝国」の正体は、カンのいい人なら序盤で気づくはずだ。同じようなオーバーテクノロジーを持つ存在がそうそうあるはずないもの、つまり敵も味方ももとをたどれば……。
自分たちだけで管理できない巨大メカを運用するために「現地人」を利用するのは侵略SFの定番だが、居場所がない真潮や昴たちには「救い」でもある。
結末もハッピーエンドのようで、その後の地球はとてつもない騒ぎになっているはずで、「幸せそうな奴らに一矢報いてやったぜ」と暗い悦びが胸に湧きあがる。
クライマックスで「舞台」となる東京の“ある場所”を破壊するという点では、『シン・ゴジラ』よりも踏みこんでいる箇所もあり。
大田区は最近、創作的にいろいろなイベントがあってうらやましいかぎりです!
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。