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『吉野朔実作品集 いつか緑の花束に』(吉野朔実)ロングレビュー! 多くの漫画家、マンガファンに愛された著者、最後の作品集。掲載された未公開ネームから伝わる著者の想いとは……

2017/01/19


話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!

今回紹介するのは『吉野朔実作品集 いつか緑の花束に』

『吉野朔実作品集 いつか緑の花束に』ご担当者さんから、コメントをいただきました!

月刊フラワーズ編集部 永田裕紀子さん

2016年4月に急逝された吉野朔実先生の本を発行するにあたり、「フラワーズ」に掲載された最後のよみきり「いつか緑の花束に」「MOTHER」に加え、「MOTHER」の続編未公開ネームを100P超、ご遺族のご了承をいただき、収録いたしました。

ネームという性質上、絵のないコマがあったり、ストーリーも未完で終わっています。それでも、吉野先生が伝えたかった想いはネームという形でも読者の皆様に伝わると願っております。

1人ひとりに、それぞれが大切にしている吉野作品、そして作品との思い出があると考え、帯には「吉野朔実から、あなたへ。」と載せました。

吉野先生から“あなた”への最後の物語、どうぞ受け取っていただければと思います。


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『吉野朔実作品集 いつか緑の花束に』
吉野朔実 小学館 ¥1,111+税
(2016年12月9日発売)


昨年2016年4月、吉野朔実の突然の訃報はマンガファンを揺るがした。享年57歳。早すぎる死が、心から惜しまれる。

1980年に「ぶ~け」でデビュー。硬質だが華のある絵柄、そしてステレオタイプに陥らない登場人物たちに魅了された。
初期の代表作『月下の一群』『少年は荒野をめざす』のヒロインはいずれもちょっとした変わり者だが、それでいて自分だけが特別というヒロイズムとは無縁だ。
彼女たちがていねいに言葉を選んで自分を語り、また他者を理解し世界を拡げていく……随所に心に響く名ゼリフがあり、多感な青春期のバイブルとして大切に読んだ方は多いだろう。

一方で、人間関係や社会を生きる難しさを描き続けた吉野は、憎しみや悪意、暴力、狂気といったテーマにも取り組んでいく。
容易に愛に救われる、とはいかない……人が己のネガティブな要素に向きあう姿を厳しくも懐深いまなざしで描き、幅広い読者に支持された作家である。

相当な読書家であり、長きにわたって「本の雑誌」に連載された「吉野朔実劇場」は、気楽に読めるエッセイマンガでありつつ、優れた書評との評価も高い。シリーズ全8冊をまとめた『吉野朔実は本が大好き』をぜひおすすめしたい。

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単行本情報

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