「期限」を知ったエマとノーマンには、嘆いているひまはない。
レイも仲間に加えて知恵をしぼり、幼いきょうだいも含め、森を抜けて孤児院の全員で「脱獄」することを決意する。
読み返してみると、エマたちが世界の真実について知るたびに、画のなかでもその設定が少しずつ明かされていくしかけになっていることにも驚く。
脱獄に向けて手に入れる情報は、図書館の本やハウスのしかけを調べるばかりでなく、ママ・イザベラとの心理戦にうち勝ち、なにげない会話や行動のはしばしから拾い集めるのが重要となる。命を賭けて動揺をひた隠し、笑っているエマたち同様、読んでいて手に汗を握ってしまう。
一方、慈愛の笑みを崩さないイザベラにも、なんらかの背景があるようだ。彼女の隙を狙っていたエマたちに新たなピンチが訪れる──。
ダークファンタジーの味わいがたっぷりつまった本格SFであり、かつ少年少女が仲間とともに不条理な支配から逃れるべく立ち上がる、胸が熱くなるストーリーだ。第1巻時点では特殊能力の発露もないせいか、やはり第一印象の通り、読みつがれる冒険小説のようなワクワク感もある。
しかし、ハウスの外、「鬼」が跋扈(ばっこ)する世界がどのようになっているのか、なぜそうなったのかはまだ見えてこない。おまけに、無惨に「出荷」されたコニーを思い起こすと、少年マンガの枠すら超えた容赦ない、過酷な展開もありえるのでは……。
エマたちには最後まで笑っていてほしい。
壮大な物語が始まったばかりだが、そう願わずにいられなくなる。
『約束のネバーランド』 第2巻
白井カイウ(作) 出水ぽすか(画) 集英社 ¥400+税
(2017年2月3日発売)
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<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。
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