話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
★現在発売中の『このマンガがすごい!2018』オトコ編 第1位に輝いた
『約束のネバーランド』を紹介!!
『このマンガがすごい! 2018』
『このマンガがすごい!』編集部(編) 宝島社 ¥550+税
(2017年12月9日発売)
今回紹介するのは『約束のネバーランド』
『約束のネバーランド』 第1巻
白井カイウ(作) 出水ぽすか(画) 集英社 ¥400+税
(2016年12月2日発売)
2016年は、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』をはじめとして、「週刊少年ジャンプ」の長期連載マンガが何作も完結した年であった。
国民的マンガや、長く読み続けて来たマンガが終わって寂しい気持ちもあるが、「週刊少年ジャンプ」とは、常に新しいものを見せてくれる雑誌でもある。
それを示してくれたのが『約束のネバーランド』である。
まるで児童文学の挿絵のような絵柄だ。
血のつながらない多数のきょうだいたちが森に囲まれた「グレイス=フィールド ハウス」にて、聖母のごとく優しいママ・イザベラのもとで仲よく暮らし、にぎやかな食卓や古風な建物や家具は緻密に描かれ、ほのぼのとした雰囲気が漂う。
そして、主人公格は「少年ジャンプ」には珍しい女の子だ。少女・エマは11歳で運動神経にも学習能力にも恵まれ、少しドジだが愛情深い女の子である。同じ年齢の男の子で頭脳戦を得意とする優等生なノーマン、ちょっとクールな博識で知恵者のレイも含め、年長者トリオとして弟妹から慕われている。
少年マンガとしてはまったく異色な印象を受けるだろう。
しかし、ユートピアは突然崩壊する。
6歳の妹のコニーがハウスを卒業する時、エマとノーマンはある理由で言いつけを破り、行ってはいけないとされている門に行く。
そこで目にしたのは、変わり果てた姿のコニーと、巨大で異形の存在「鬼」、さらに彼らと冷静に取引するイザベラの姿だった。
自分たちは「鬼」の食料として出荷されるために育てられた存在である、という身も凍る真実を聞いてしまう。たしかに、首に刻印された識別番号や、卒業後は音信不通になるきょうだいたち、など小さな謎が符合していく。
自分たちの信じていたあたたかい世界は、ディストピアに一転する。