話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも！

今回紹介するのは『このマンガがすごい! comics　土山しげる自選 ラーメン特別選！』

『このマンガがすごい! comics　土山しげる自選 ラーメン特別選！』
土山しげる 宝島社 ￥590+税
（2017年3月10日発売）

食マンガのオリジネイターにして帝王、土山しげるの自選集が「このマンガがすごい! comics」より刊行された。お題はずばり「ラーメン」。

土山食マンガといえば、荒唐無稽なストーリーと、いかにも旨そうなリアリティあふれる実食シーンが魅力だが、なかでも「ラーメン」はそれを味わうにはうってつけの題材にほかならない。

たとえば、1995年に「週刊漫画ゴラク」で連載開始され、「土山しげる＝食マンガ」のイメージを決定づけた大ヒット作『喧嘩ラーメン』。
ラーメンの名店「がんてつラーメン」の息子で元ヤンの義経が、親父の味を超える自分だけの新しいラーメンを求めて、日本各地で勝負を繰り広げながら旅をする「ラーメン武者修行もの」だが、煮えたぎった鍋に素手をつっこんで麺上げをする親父、食べる価値がある！　と認めたラーメンを食べるときは腕まくりをする（通称・まくり食い）ラーメン評論家など、濃ゆいキャラクタがケレン味たっぷりのバトルを繰り広げる様は、まさに「読む・格闘技」！

「がんてつラーメン」にラーメン評論家・円城寺がきた時のエピソード。ラーメンという食べ物は評論家ですらキャラが濃くなる!?　群衆の野次がまたラーメン熱を盛り上げる！

たかがラーメンのために命を賭けたり、町をあげてのお祭り騒ぎになったり、破天荒を通り越してシュールすぎる展開も、ラーメンという食べ物に託された「男のロマン」を雄弁に物語る。
スープや麺についての知識、現在のラーメン業界についての考察もそんじょそこらのグルメ本なんぞ太刀打ちできない感じで、本気のラーメンマニアもうならさられること必至だ。

もはやチャーハンはラーメンための前戯でしかない……。己の肉体を知り尽くした大喰いアスリートたちの戦法は医者も真っ青！