『リビドーハンタータケル』第3巻
丈山雄為 集英社 \480+税
（2014年8月4日発売）

日本の少子化は天界にとっても深刻な問題。そこで聖天子ペロエルが下僕にしたのは、内気にして弱気、草食系男子を通り越して草！　みたいな男子高校生の利美堂 猛だった。
通常の3倍の性欲を秘めた猛は「オトコリング」で内なる獣を解放し、女子の欲(リビドー)を回収して少子化を阻止する使命を託される。

オトコリングで変身して“オトコ化”した猛は究極のイケメンだ。ルックスも身体能力も最高にパワーアップし、女子の方からフラフラと惹き寄せられる。ズッキューンとキスを決めて、リビドーを回収するのだ。
リビドータケルは心までイケメン。女子を弄ぶ外道どもに殴り込み、女の敵はぶっ飛ばす！　女は全員悦ばす！　「ポコボコキスゥ」なんて擬音はこのマンガ以外じゃありえない。
でも「誰にでもモテる」ってうれしいの？　欲望だけの愛ってむなしいね……ってうそぶいちゃうわけですよ。リアルでそんなこと思ったことないのに。

猛が集めたリビドーは聖天使のペロエルに口から吸い取られる。つまりキス。むちむち美少女のマスターがノルマ達成のためにお風呂に一緒に入って元気づけてくれる。「おっぱおーん」という文字から想像するがよいですよ。

しかし本当にうらやましいのはそこじゃない。口下手でぼっちな幼なじみのゲーマー女子が勇気を出してお弁当を作ってくれる。人々の輪に溶けこめない読書好きのメガネっ娘がひそかに想いを寄せてくれる。ギャルにモテよりそっちでしょ！(個人の感想です)

ペロエルと敵対するというかストーカーの変態天使アビゲイルなども現れ、いよいよ天界での陰謀もからむ大きな展開をはらんできた第3巻。肉感×かわいらしさの同居する絵柄、でもキスで寸止め……まで含めて、現実の読者のリビドーを高めまくって少子化を解消しそうな本作が末永く続きますように。

＜文・多根清史＞
『オトナアニメ』（洋泉社）スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』（宝島社）『教養としてのゲーム史』（筑摩書房）、共著に『超クソゲー３』『超ファミコン』（ともに太田出版）など。