『絢爛たるグランドセーヌ』第2巻
Cuvie(キュービー) (著) 村山久美子(監) 秋田書店 \562+税
(2014年8月20日発売)
“グランドセーヌ(大舞台)”に夢を馳せる少女・奏(かなで)のバレエ道はまだまだ始まったばかり。発表会でスポットライトを浴びて踊る快感を知り、さらに小学生離れした実力を持つライバルとの出会いにより、バレエへの情熱はますますふくらんでいく。
プロのバレリーナになるとは、どんなことなのか。バレエ雑誌をめくる奏の目に飛びこむのは「コンクール」「上位入賞」「奨学金」「海外留学」などの言葉……それを、夢ではない“現実のもの”ととらえて胸を熱くする場面がいい。
夢を実現するにはどれだけの努力と覚悟が必要か、またコンクールに出るにもどれだけお金がかかるのか。小学生ながらにこれを理解した時、バレエは単なるお稽古事ではなくなる。大舞台を本気で目指そうとすれば、「好きだから、楽しいから」だけでは済まされない熾烈な世界に足を踏み入れるのもたしかなのだから。
技術的にはまだまだ未熟な奏。では、ヒロインたる条件としてどんな天賦の才を備えているのかというと……それは「観察眼」なのである。人の踊りを見て、どこが美しいか優れているかを見て取る能力がどのようにいかされていくか、楽しみだ。
ちなみに作者はバレエ経験があるそうで、踊りの描写や知識のみならず、バレリーナの卵たちの日常や心理面の現実感に満ちた描写も見どころである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」