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【特ダネ】『相棒』の杉下右京さん、重度のプリキュアオタだったことが判明!?【B級ニュース】

2017/03/28


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「あの右京さんがプリキュアオタだった」について。


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『杉下右京の多忙な休日』
碇卯人 朝日新聞出版 ¥1,500+税
(2015年10月7日発売)

俳優・水谷豊主演の人気テレビドラマ『相棒season15』が最終回を迎えた。
その最終回で、トンでもない事実が発覚したのだッ!
水谷豊演じる杉下右京警部は、推理の過程で、家族写真に写りこんだカレンダーに注目。そこに貼られたプリキュアのシールを見て、「このプリキュアはまだ2010年には登場していない」といい放ったのである!

みなさんは歴代『プリキュア』シリーズに、何人のヒロインが登場したかご存じですか?
『プリキュア』シリーズは14年目に突入し、現在放映中の『キラキラ☆プリキュア アラモード』までに、なんと51人ものプリキュアが登場しているのだッ!!

厳密な人数は諸説あるものの、2016年に公開された劇場版『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』に「史上最大44人のバトルミュージカル!!」とのキャッチコピーがあったので、その映画以降に追加されたプリキュア(『魔法使いプリキュア!』から劇場版こみで2名、『キラキラ☆プリキュア アラモード』から5名)を含めると51人になる、というわけだ。

いずれにせよ右京さんは50名以上のプリキュアをしっかりと認識しており、1人ひとり見分けがつくのである。


……なんということでしょう!!!

右京さんは「ネットで調べた」といっていたが、これは明らかな虚偽申告だ。仮面ライダーにしても鉄道にしてもプリキュアにしても、興味のない人からすれば「全部いっしょに見える」かもしれないが、そこに深い愛情を注ぎこむ人にとっては「みんな違って、みんないい」のである。
「ネットで調べた」とか「知り合いに詳しいヤツがいる」なんてのは、まぁ、ほら、みんなが使ってる常套句ですからネ。
右京さん的には「僕としたことがうかつでした」だろうが、彼が〝大きなおともだち〟であることは、もうバレちまったのである。



……このように日々の生活のなかで、ふとしたキッカケでオタク趣味がバレてしまうことがある。
これを「オタバレ」という。

なぜオタクが自分の趣味を隠すかというと、オタクであることがバレると世間から白眼視されてしまうからである。
オタクと世間一般のあいだには、互いに理解し合えないほどの深くて長い谷があり、その渓谷の名を「オタ・バレー」と呼ぶ……かどうかは定かではないが、オタクの谷の住人たちは日夜「オタバレ」に細心の注意を払いながら生活をしている。
右京さんの「オタバレ」も、明日は我が身と身震いしたハズだろう。


そこで今回は「オタバレ」を題材にした作品を取りあげていく。
相棒とプリキュアを、レッツ・ラ・まぜまぜ!


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『トクサツガガガ』 第1巻
丹羽庭 小学館 ¥552+税
(2014年11月28日発売)

まず紹介したいのが『トクサツガガガ』(丹羽庭)。

主人公の仲村さんは特撮ヒーローが大好きな26歳のOLである。特撮オタク(特オタ)であることは、もちろん職場にはナイショだ。
そのため、隠れオタならではの苦悩が随所に描かれる。同僚とのカラオケで本当は特撮ソングを歌いたいのに、ドン引きされるのを恐れて歌えなかったり、好きなカプセルトイ(いわゆるガチャ)の台が置かれている付近に人気のカレー店ができて利用しづらくなったり……と、「オタバレ」を気にする人がどのような点に配慮しているのかがよくわかるだろう。

ヒーローショーやDVD特典などに見られる「特オタあるある」と、オタバレを気にする「隠れオタあるある」が、非オタにも通じるようにコミカルに描かれていくので、小さいころに特撮(戦隊ヒーローやメタルヒーローやライダーなど)を一度でも見たことがあれば、充分に楽しめるハズだ。


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『コンプレックス・エイジ』 第1巻
佐久間結衣 講談社 ¥570+税
(2014年8月22日発売)

女性コスプレイヤーを題材にしたのが『コンプレックス・エイジ』(佐久間結衣)である。

主人公の片浦渚(コスネームは「凪」)は26歳の派遣社員の女性。
高校時代からコスプレに熱中しコスプレ界隈では名の知れた存在だが、高身長とか年齢とか隠れオタとか、さまざまな要素にコンプレックスを感じるようになる。
派遣先の正社員がコスプレイヤーと発覚して職場を追われたり、恋人のコスプレに対する無理解とか、「オタバレ」案件もふんだんに扱われる。
題材はポップだが話の展開はシリアスで、コスプレ界隈の人間関係のいざこざは、かなり踏みこんで描かれる。
オタクである以上、誰しも「オタ卒(卒業)」を意識するタイミングはあるだろう。自分の人生において、オタク趣味とどのように付きあっていくのかを考えさせられる作品だ。


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『スローモーションをもう一度』 第1巻
加納梨衣 小学館 ¥552+税
(2016年10月28日発売)

『スローモーションをもう一度』(加納梨衣)は、80年代カルチャーを題材にした異色のラブコメ。

主人公の大滝くんは、リア充グループに所属する高校一年生。運動神経抜群で、スクールカーストのトップグループにいるが、80年代文化愛好という、だれにもいえない趣味を抱えていた。
アイドル、歌、おもちゃなど、80年代にヒットしたものを密かに集め、だれとも共有できず、ひとりで楽しんでいたのだが、ある日、クラスでは地味な存在の薬師丸ちゃんが自分と同じような趣味を持っていることを知る。
同じ趣味を持つ同世代に初めて出会った大滝くんは、最初は興味本位から薬師丸ちゃんに接近するが、やがて彼女のことが気になっていく。いわば「オタバレから始まるラブコメ」なのである。

映画『シング・ストリート 未来へのうた』(2016年公開)など、世界的に80年代のポップカルチャーがプレイバックされがちな昨今。『スローモーションをもう一度』は最新のトレンドを踏まえているわけだが、なにより80年代「週刊少年サンデー」の代名詞だったラブコメをフレッシュにアップデートしているところが、小学館ならではのセルフオマージュ的でもあり、『スローモーションをもう一度』のスペシャリティといえる。


先週、妻にスター・ウォーズのグッズコレクションを破壊されたイギリス人男性が、妻を殺害するという痛ましい事件が起きた。家族という、もっとも近い他人にすら理解されないのだから、オタクが自分の趣味を隠したがるのも無理はない。
別におおっぴらにカミングアウトする必要はないけれど、あんまり自衛意識が高すぎても卑屈になるので、じつは右京さんのように
「ネットで調べた」
とか
「知り合いに詳しいヤツがいる」
なんていいながら、ちょいちょい小出しにしながら、少しずつ自分のオタク趣味を周囲に知らせていくのが上策かもしれませんネ~。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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