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“海の王子”は地球侵略を目論む異星人だった!? 眞子様ご婚約記念! 【B級ニュース】

2017/05/23


複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。

今回は、「眞子様、海の王国に輿入れ!」について。


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『皇室 平成28年 秋 第72号』
扶桑社 ¥1,600+税
(2016年10月25日発売)

先週、秋篠宮ご夫婦の長女の眞子様(眞子親王殿下)が、大学時代の同級生と婚約される見通しになったことが大々的に報道された。
お相手の小室圭さんは、神奈川県の藤沢市観光協会が主催する2010年度の「湘南江の島海の王子」として、観光キャンペーンで活躍した経歴を持つそうだ。

「海の王子」!
なんとすばらしいネーミングセンスか。わずか4文字でありながら、圧倒的に「さわやかさ」のイメージを伝えてくるパワーワードだ。
「肉体疲労時の栄養補給」に匹敵するほどの、シンプルで力強いキャッチコピーといえるのではないだろうか。一時期大流行した「○○王子」ブーム(ハンカチなど)のような軽薄さは感じられないところがいい。
じつはマンガの世界では、これまで数多くの「海の王子」が存在した。
といったわけで今回は、マンガの世界における「海の王子」について意見交換会をしていきたい所存である。
マリ〜ン。

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『藤子・F・不二雄大全集 海の王子』 第1巻
藤子・F・不二雄 小学館 ¥1,600+税
(2009年12月25日発売)

まず最初に紹介したい作品が、その名もズバリ『海の王子』(藤子・F・不二雄)だ。
本作は、小学館「週刊少年サンデー」創刊にあわせて連載をスタートさせた、藤子不二雄両人にとっても記念碑的な海洋SF冒険活劇である。
藤子不二雄といえば、藤本弘氏(藤子・F・不二雄)と安孫子素雄(藤子不二雄A)がコンビを組んでいた時代の2人の共通ペンネームだ。

コンビ時代から実質的には別々の作品を描いてきたことでも知られているが、本作『海の王子』は2人による合作である(現在は小学館の「藤子・F・不二雄大全集」シリーズから刊行)。善玉側を藤本氏が、悪玉側やメカのデザインなどを安孫子氏が担当している。
物語本編は、ウラン鉱を積んだ貨物船・大洋丸が、悪の組織「黒いおおかみ」に襲われるところから幕を開ける。そこに海中から「はやぶさ号」に乗って颯爽と登場し、「黒いおおかみ」と対決するのが「海の王子」だ。 「海の王子」とは、海底王国カインの王子である。妹のチマとともに「はやぶさ号」に搭乗し、世界征服を企むさまざまな悪と戦っていく。

本作における「海の王子」は、明るく快活で、強くたくましく、メカや科学に精通していて、そしてどこか子どもっぽさをあわせ持つ完全無欠の正義のヒーローだ。幼年向けの勧善懲悪作品ならではのヒーロー像ともいえるが、昨今ではあまり見かけなくなった「わかりやすいヒーロー」が活躍する姿には、素直に喝采を送りたくなる。
あと、妹のチマがひたすらかわいい。

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『手塚治虫 マリン・エクスプレス』 第1巻
手塚治虫(作) 池原しげと(画) ホーム社 ¥640+税
(2016年9月23日発売)

手塚治虫の『海底特急マリンエクスプレス』にも、「海の王子」が登場(搭乗)した。
『海底特急マリンエクスプレス』は、1979年に日本テレビ『24時間テレビ「愛は地球を救う」』内で放映されたオリジナルアニメである。

この作品の最大の特徴はスター・システムを大々的に採用している点だ。
スター・システムとは、マンガのキャラクターを役者に見立て、ひとりのキャラを異なる複数の作品に登場させる手法のこと(ただし役割や名前は、作品ごとに異なる)。この『海底特急マリンエクスプレス』には、アトム(『鉄腕アトム』)がアダムという名前で登場するほか、ブラック・ジャックは本人役で登場するし、手塚作品に共通して探偵役として出てくる伴俊作が主人公的な位置づけにある。いわば手塚キャラのオールスター的な作品であり、特番ならではのお祭り的な側面も持つ。
なお、本作はアニメ作品だが、現在、手塚自筆の絵コンテを手がかりに、かつて手塚のアシスタントだった池原しげとがコミカライズに挑戦しており、2017年5月現在で第2巻までが刊行されている。

気になるストーリーはというと、ロサンゼルスと東京を海底でつなぐ太平洋横断鉄道「マリン・エクスプレス」が完成した近未来が舞台。
海底鉄道建設公団の理事長シャイロックが何者かによって暗殺された現場に居合わせた私立探偵・伴俊作は、ブラック・ジャックに命を救われると、シャイロック殺しの犯人を追って「マリン・エクスプレス」の試乗会へと乗りこむ。様々な事件が起き、やがて「マリン・エクスプレス」は1万年前に存在したムー帝国に迷いこむ。
このムー帝国で女王を務めるのが、『リボンの騎士』でもおなじみのサファイアだ。そして、ムー帝国を乗っ取り、王子を自称するのが、クリプトリプトン星からやってきた異星人のシャラク(『三つ目がとおる』の写楽保介)。
海底に沈んだ王国の王子……、「海の王子」はシャラクだったのだッ!
シャラクは地球侵略を企てており、あんまりさわやかな感じではない。

ちなみに主人公の伴俊作は、ヒゲオヤジの名前でも知られている。現在NHKでアニメが放映されている『アトム ザ・ビギニング』(コンセプトワーク:ゆうきまさみ、漫画:カサハラテツロー)には、まだ高校生の若かりし日の姿で登場しているので、まだハゲる前の美青年の伴俊作が拝める。

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『海底人類アンチョビー』 第1巻
安永航一郎 小学館 ¥485+税
(1993年3月発売)

最後に紹介するのは『海底人類アンチョビー』(安永航一郎)だ。
どこにでもいる普通の中学生・新巻圭は、ある日に目をさますと、両手に水かきができていることに気づき、海底人類であることが告げられる。
なんと圭は、古代アトランチス2万年の流れをくむ海底国家アンチョビーの王子であったのだ。ところがアンチョビーは、つい先日滅亡したばかり。海から現れた親衛隊長スモークによって、圭はアンチョビー復興の旅に巻きこまれてしまう。
冒頭で『海のトリトン』のパロディネタをやったり、アンチョビーの衣装を着た圭をガールフレンドが「そのカッコはまさか…」「同人誌の即売会ーーっ!!」とツッコんだりするように、パロディやギャグをふんだんに盛りこんだ、安永航一郎作品らしいドタバタ海洋冒険SFである。
こちらの「海の王子」は、陽性の巻きこまれ型主人公だ。

今年もまもなく梅雨入りするが、それを抜ければいよいよ夏本番。
マンガの世界の「海の王子」を参考にして、今年の夏はキミも「海の王子」になってみないかッ!?



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

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