人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、本田先生!
「書店売場は……リアルな欲望と欲望のぶつかり愛!!!!?」
とある書店のコミックス売り場で働く書店員さん、そしてお客様たちとの交流やひと騒動を描いたエッセイ『ガイコツ書店員 本田さん』。書店員さんたちや同業者の方たちからの熱い支持はもちろん、そのハイテンションかつリアルな書店の姿にマンガファンのあいだでもたいへん話題となり、『このマンガがすごい!2017』にもランクインした注目作です。このマンガを読んで、こっそり本田先生を書店で探したりしちゃった方もいるハズ……☆
今回、最新第3巻の発売を記念して、本田先生にインタビューをさせていただきました! 本作の魅力や制作秘話、驚愕の職場体験談などなど、マンガでも語られていないお話がたっぷり! 「マンガを売る側」「マンガをつくる側」両方の顔を持った、本田先生のスガオとは!?
「売れてるよ」は同僚のリップサービスだと思っていた!?
――『このマンガがすごい!2017』オンナ編第12位ランクイン、おめでとうございます。本田先生ご自身、書店に勤める立場ですからランキングは意識されていましたか?
本田 いえ、まったく。ランキングとか、そういうのに無縁の人生なので……。
――えっ、でもコミック売場担当ですし、売れ行きを目の当たりにしていたのでは?
本田 それが、私が立っているレジにこの本を持ってくる人はあまりいなくて。同僚たちは「今日も売れたよ」と言ってくれていたんですけど、気をつかって盛りあげてくれてるんだろうなと。
――じゃあ、ランクインを知った時はかなり驚きました?
本田 はい。ありがとうございます!
――デビュー作である本作は、どんなきっかけで描き始めたのでしょうか。
本田 描き始めた頃はまだバイトだったんですが、マンガにしたらおもしろいかなと思うことがいろいろあって。友だちに見せたら、おもしろいよと言ってくれる人がいたのでピクシブで公開してみようかなと。
――純粋に「こんなにおもしろいことがあったから伝えたい」みたいな?
本田 そうですね。当初はタテ長のフォーマットで描いていたんですけど、それが編集さんの目にとまって声をかけていただいて。「ジーンピクシブ」で発表することになり、マンガの形式で描くようになったんです。
ガイコツの顔を描くのはかなり面倒くさいです
――ところで、なぜ本田さんはガイコツなんですか?
本田 それが……自分でもよくわからないんですよね。親に聞いたら「小さい頃からガイコツプリントのTシャツがお気に入りだったよ」と言われたので、モチーフとして好きだったのかもしれませんが。
――なんとなく?
本田 そうなんですよ。意味はないって言うとみんな気持ち悪がるんですけど(笑)。上司に見せた時もすごいツッコまれましたね。「なんでガイコツなの? 常に生への不安とか抱えてるの?」って。いや、別にそういうんじゃないんですけど。
――エッセイコミックでなんとなく自分をキャラ化するとして……猫キャラやウサちゃんを描くような自然なノリでガイコツになった?
本田 そうです。私、自分でキャラクターを生みだすのがヘタなんですよね。書店員マンガでいうと『暴れん坊本屋さん』の久世番子先生とか、ペンギンなんだけどちゃんとデザイン化されたキャラになってますよね。私にはああいうことができなくて、そこらへんにあるモチーフを使ったという。
――ところがデフォルメタッチじゃなくて、かなりリアルなガイコツだという……。緻密に描かれてるので、歯とか手の骨とか、ふつうの人間を描くより数段手間がかかりますよね。
本田 顔を描くのはかなり面倒くさいです(笑)。きょう、いつも机の上に置いているガイコツを持ってきたんですけど。この小さいのは、関節が動くんですよ。膝の関節とかはもちろん顎関節も。
――小さいのによくできてますね。
本田 これはガチャガチャみたいなので手に入れたんですが。
――へえ~、いつもこれを見ながら描いてるんですね。
本田 じつは、等身大の骨格標本もあるんですよ。ジーンピクシブで公開してから「いいね」が10万いったら10万円分の標本を買おうと思って待ってたんです。ドイツの「3B社」という有名な標本の会社があって。すごくたくさん種類があって、標本に名前がついてるんです。スタンさんというモデルを選びました。
――スタンさん!?
本田 たぶんもとになった方の名前じゃないか、と想像してました[注1]。スタンさんは男性です。実物の骨格から型取りされてるので、モデルになった骨がいろいろあって。標本によって可動する場所が違うとか、取り外しできるとか、内臓がちょっと入ってるのとかいろんなタイプがあるんです。
――ああ~、なるほど。
本田 あともう1体、80cmくらいのがあるんですけど。
――子どもサイズですね。
本田 これはどうも不良品で。サイトで見ていいなと思って買ったんですが、届いたら画像と全然違うんです。鎖骨と肩の骨が前に出てて……全然かわいくない! 部屋に立ってますけどね(笑)。
――本田先生にとってガイコツはやっぱり親しみある存在なんですね。マンガのなかではガイコツなのに、重いものを持ったりして働いてる姿が健気に見えます!
本田 食べたものはどこにいってるんだろうと思ったりします。そのへんはかなり矛盾した存在なんですけど。
- 注1 ここで本田先生が話している標本「スタン」の名前の由来はあくまでも、本田先生の想像です。標本モデルの名称は諸説あるとのことで明確な理由は公表されておりません。