『同居人の美少女がレズビアンだった件。』
小池みき(著) 牧村朝子(監) イースト・プレス \1,000+税
(2014年9月14日発売)
牧村朝子を知っているだろうか。2010年度ミス日本ファイナリストで、日本で初のレズビアンタレントとして活動した女性だ。
たまたま牧村とシェアハウスで一緒になった著者の小池みき。牧村との出会い、彼女が女性と結婚した道のり、その後の活動の様子を、ノンフィクションコメディとして軽快に描いている。
シェアハウスでの牧村の、小池へのカミングアウトは、あっさりだった。
「私も早く彼女欲しくてさー」「フーン」
あとがきを見ると、牧村はじつは内心びくびくしていたのがわかる。
その後、彼女はフランス人の森ガ(森でたくましく暮らすから森ガール)と出会い、あっという間に結婚までこぎつける。
日本にいた時は、多くの理解者に囲まれていた。女性との結婚を、シェアハウスの仲間をはじめとして祝う声があがる。しかし、「レズなんて理解できません」「気持ち悪い」という冷たい批判をネットで浴びせられることもあった。
牧村が森ガと一緒に暮らす決意をした2011年は、PACS婚(2人のペアが法的婚姻関係と同等の権利を得られるフランスの準結婚制度)しかなく、同性結婚はまだなかった。森ガとの幸せな日々と裏腹に、フランスで大規模なデモが続く。賛成派のパフォーマンス、過激な反対派の抗議デモや冷たい罵り。なかばお祭り騒ぎだった。
2013年5月、フランス上院で同性カップルの権利を認める法案が成立。歴史的瞬間を、2人は経験する。
重要なのは、牧村が「レズビアン“だった”」という部分。
たしかに女性が好きな牧村は、一般的に言うレズビアンだし、本人もそれを自称していた。しかし、「レズビアン」という言葉にあわせ、演じようとすると無理が生じる。彼女はその言葉を捨てて、「牧村朝子」という個に戻る。だから過去形なのだ。
これはすべての人に関わる問題だ。ヘテロ(異性愛者)とかバイ(男女両方愛す人)とか同性愛とか、言葉で分類されるのをやめて、個としての自分を見つけられるかどうか。
描かれているのは特別な出来事じゃない。すぐ側にある悩みだ。ぜひ、あらゆる人に読んでもらいたい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」