双葉文庫『ルパン三世』第1巻
モンキー・パンチ 双葉社 \571+税
インターポール(ICPO=国際刑事警察機構)といわれて、いったいどんな組織を思い浮かべるだろうか?
おそらく多くの人が思い浮かべるに違いないのは、『ルパン三世』に登場する銭形警部だ。
銭形警部は世界を股にかけて捜査を行うインターポールの国際刑事にして、ルパン専任の捜査官。警視庁から出向という形で、インターポールに派遣されている。
本日2月5日は、そのインターポールが設立された日。ただ、実在するインターポールは、『ルパン三世』のなかで描かれる組織とは、当然ながら異なっている。
もともとインターポールは、国を越えた犯罪が増加するなか、世界各国の警察機関によって国際犯罪の防止を目的に組織された機関。
1923年の2月5日、オーストリア警察の主導で「国際刑事警察委員会」としてウィーンに創設され、1956年、新たに「国際刑事警察機構」となって設立された。
日本の参加は前身時代の1952年で、現在、本部があるのはフランスのリヨン。190か国が加盟し、2014年にはサイバー犯罪対策を中心としたシンガポール総局も設置されている。
この初代総局長は、日本の警察庁からインターポールに出向中の中谷昇氏だという。
『ルパン三世』の世界観さながらだが、そもそも実際のインターポールは各国の法執行機関の連絡・協力機関で、独自の捜査権限は持たない組織。つまり、国際捜査官は存在しないわけだ。
さらに、銭形警部がインターポールの捜査官だというのは、ルパンの赤ジャケットを初めて採用したTVアニメ第2シリーズ(1977~1980年)からの設定。モンキー・パンチによる原作の銭形はあくまで警視庁の警部なのだ。
もっと言えば原作では、宿敵としてルパンの真実にもっとも近づいた、寡黙(!)でキレ者の敏腕警部として描かれている。
インターポール設立の日に、組織の実態、さらに原作で銭形警部の実像に触れてみるのも楽しいかもしれない。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。