『新・幸せの時間』第21巻(双葉社)
国友やすゆき 双葉社
(2015年1月28日発売)
1997年から足かけ17年に渡って続いた『幸せの時間』シリーズがついに完結した。
エリートサラリーマンの浅倉達彦が妖艶な愛人を作り、浅倉家が崩壊したのが前シリーズ。2012年に昼ドラ化した際は、神楽坂恵のエロすぎる演技が物議を醸し、BPOから厳重注意を受ける騒動に発展した。
2005年から「漫画アクション」でスタートした『新・幸せの時間』は、達彦の長男である良介が主人公。
父親の過ちを間近で見ていたはずなのに、良介もまた道を踏み外す。愛する妻・ちづるの妹である小夜子と関係を持ってしまったのだ。
ちづるの婿に入り、義父の会社・牧原物産の社長にまで上りつめたのに、小夜子だけでなく部下の遠藤とも不倫関係になり、業務上でも禁断の領域に手を染め始める。あげくのはてには殺人までも……。
それもこれもすべては小夜子との愛を貫くため。小夜子がいれば他には何もいらない!
日本のマンガ史上、ここまで外道な主人公がいたであろうか。
この最終巻では、良介から数々のむごい仕打ちを受けたちづるが、暴走モードに突入。泥沼の関係に終止符が打たれる。
エンドロールでは良介の元カノであるシンガーの奈津が「幸せの時間」という歌を披露するのだが、これは国友やすゆきが作詞・作曲したオリジナルソング。最終回が掲載された「漫画アクション」では、国友自身が歌った「幸せの時間」をCD化し、20名にプレゼントという前代未聞の企画が行われた。
常識や道徳と真っ向勝負をし、制御不能な“真実の愛”を追求してきた問題作が幕を閉じるのは寂しいかぎりだ。
<文・奈良崎コロスケ>
68年生まれ。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。中野ブロードウェイの真横に在住する中央線サブカル糞中年。4月4日公開・松尾スズキ監督『ジヌよさらば~かむろば村へ~』の劇場用プログラムに参加します。
「ドキュメント毎日くん」