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『毒親こじらせ家族』 松本耳子 【日刊マンガガイド】

2015/07/31


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『毒親こじらせ家族』
松本耳子 竹書房 \1,000+税
(2015年7月3日発売)


『毒親育ち』で話題を集めた著者の「毒親」コミックエッセイ第2弾。

ギャンブル狂で多重債務者で極道な父、神経質でヒステリックな母、グレてスーパーヤンキーからの結婚、そして離婚と落ち着きがない妹、愛情を一心に受けるもバブル崩壊ともに転落人生を歩む弟……。
「毒親」というより、たんなる「DQN」? と思ってしまうほど、ある意味、わかりやすすぎる「毒」に囲まれて育ちながらも、大人になるまでそれがフツーだと思っていたという著者に驚きつつも、子どもの頃は自分の家が世界のすべてだもんなー、と切なくなってしまう。

トンデモすぎる家族エピソードも、コミカルなタッチでサラリと読ませるうえに、著者自身の苦悩はさほど描かれてはいないため、軽い印象も受けるが、それは著者が「毒の連鎖」を断ち切り、現在では親を許せる状態にあるから。
そんなニュートラルな目線で語られた「毒親と私の男運」なる章は、「だめんず」にハマりがちな女子ならドキッとさせられること必至!

「毒親」とか、自分には関係ないな~という人も、「自立した大人になって、初めて自分の親をひとりの人間として客観的に見た時、ちょっとコイツ……と思ってしまった」とか「理解不可能な言動をする知人の家庭環境を知って、初めて謎が解けた気分になった」とかいう経験は、少なからずあるのではないだろうか? 
そういう意味では「毒親本」の類いは、たとえ当事者でなくとも、だれもが読めばきっと何かしら感銘を受けるものがあるはずだ。

コミックでも、古くは、萩尾望都『イグアナの娘』近藤ようこ『アカシアの道』から、最近では、よしながふみ『愛すべき娘たち』田房永子『母がしんどい』原わた『ゆがみちゃん』などなど、名作多数なので、本書を入り口にぜひ!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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