ついに単行本第2巻も発売されたコミック版『珈琲店タレーランの事件簿』。今回のインタビューでは、原作者・岡崎琢磨先生にコミック版を読んでの率直な感想を伺った。「自分の作品だけど、他人の作品でもある」--そんな不思議な距離感で接するコミック版は、はたして岡崎先生の目には、どのようにうつるのか。そして、お話を伺うなかで発覚した衝撃の事実! 岡崎先生のミステリのルーツは、意外なあの作品にあった!?
前回のインタビューはコチラ!
【単行本重版記念!】岡崎琢磨『珈琲店タレーランの事件簿』インタビュー シリーズ累計160万部突破の大ヒットミステリの誕生秘話を直撃!
ミステリの原点は、あの超人気コミック!?
——さていよいよコミック版のお話を伺っていこうかと思います。
岡崎 連載開始時だったり、何回かコミック版についてコメントを求められたことがあったんですけど、そのたびに難しいなーって(笑)。『タレーラン』は、もちろん僕が原作を書いているわけなんですけれど、コミック版は峠先生が描かれている以上、峠先生の作品でもあるし……どこまで何を言っていいのか悩みます。
——そんなコミック版もこうして単行本になったわけですが、初めてコミック版を目にした時は、どのような感想を。
岡崎 初めてコミック版を読んだのは、第1話のネームだったんですけど、素直におもしろかったですよね。自分が原作であること忘れるくらい(笑)。
——ありがとうございます。そう言っていただけると編集部としても非常にうれしいです。
でも当然ですけど、先の展開については、それこそ誰よりもわかってらっしゃるわけじゃないですか。どういった点におもしろさを感じていただけたんですか。
岡崎 やはりテンポのよさというのでしょうか、さりげなくページのなかにヒントが描かれていて、それが謎解きにつながるところとか。本当にマンガならではだと思って。
——なにをどこまで描くべきか、という点については、毎回峠先生もだいぶ苦心されていました。
岡崎 たとえば第1話だとアオヤマが、タレーランに来店するシーンで、後ろにちょこっと重要人物が描かれているじゃないです。こういうさじ加減が抜群だなって。
岡崎 じつは僕のミステリの入り口ってマンガだったんですよ。
——ええっ、本当ですか!? いったんどんな作品を。
岡崎 『金田一少年の事件簿』が大好きで。あれを読んで、どんどん自分のなかにミステリの手法というのを取り入れていきましたね。
——マンガを読んで培われたミステリ力で執筆された小説が、こうしてマンガになる……というのは感慨深いものがありますね。
岡崎 そうですね。でもマンガからミステリに入ったからこそ、というわけではないのですが原作『タレーラン』の第1巻については、小説ならではの、小説にしかできないミステリを書こうと思っていたんです。だから最初コミックになると聞いたときは、正直できるのかなって思った部分もありました。
——岡崎先生が原作に散りばめたトリックに、峠先生も編集部もまんまと騙されていることがたびたびあって。打ち合わせでどちらかが気づければよいのですが、そのままスルーしてしまって、岡崎先生からご指摘いただいて大慌てでなおしたこともありましたね。
岡崎 でもそれも数回だけで。回を重ねるごとにどんどん洗練されていった印象はあります。特に最後の2話(第2巻収録の第七章、第八章)は、もうまったく何も申し上げることがなく。
——最終話が一番むずかしい話だったので、そう言っていただけると光栄です。
岡崎 デビュー作ってどうしても読み返すのが怖い部分があるんです。当然、シリーズ続刊を執筆するときには読み返すんですけど、そうすると書き直したくなっちゃうようなところもあって(笑)。
でもコミック版を読んで、これまでと少し違った場所から『タレーラン』を見れて「楽しい作品だったのか!」と思うことができました。