コミックになることで見えてきた、キャラクターの魅力
——前回のインタビューで『タレーラン』に登場するキャラクターの魅力について語っていただいたのですが、コミック版のキャラクターたちもなかなか魅力的ですよね。
岡崎 ロングレビューを執筆していただいた北原さんも仰ってたんですけど、藻川さんがとても生き生きしてますよね。
——ほかのキャラクターに比べて、そのときそのときの感情で動いている印象が強いですよね。
岡崎 あと印象的なのは真実ですね。
——アオヤマの元カノの。
岡崎 原作よりも生き生きしていますよね。藻川さんは、もとから生き生きしてたところありますけれど(笑)。
——峠先生が、真実のこと好きなんです(笑)。
岡崎 でも「財布がここにあるから取りにこい。無銭飲食になるけど」なんて言われたら、さすがに怒りますよね(笑)。けど自分としては、真実はもっとこう……精神的に怖い女子……というか少しメンヘラ的なところがあるキャラクターだと思って書いていたんですね。
——たしかにあの執着心は、恐ろしいところがありましたよね。
岡崎 だからコミック版第三章「盤上チェイス」で、アオヤマに電話を切られて落ちこんでいるシーンを読んだとき、びっくりしたんですよ。あれ、この子ちょっとかわいいんじゃないかって。じんわりきました。
——コミカライズを始める前に、峠さんが仰っていたのは「キャラを嫌ってほしくない」ということでした。キャラクターが非常に魅力的な原作なので、読者にはキャラを好きになってほしいと。
岡崎 ありがたいです。愛情深く接していただいて。
——コミカライズオリジナルエピソードである第六章「流れ星の長い旅」には、オリジナルキャラクター・葉一葵(はいち・あおい)が登場しますが。
岡崎 あの子もすごくいいですよね。キャラが立っていて。
オリジナルエピソードは、初めて触れる「自分以外が描いた『タレーラン』」だったので、とても楽しませていただきました。原作ではアオヤマの視点からの話がほとんどなのですが、オリジナルの話は美星メインのエピソードになっていて新鮮でした。
——「しっかりもの」というイメージの強い美星さんの、違った一面が描かれていますよね。
岡崎 歳下の女の子に翻弄されて、怒ったり呆れたり。そういったところは、あまり原作では描いていなかったので、美星にはこんなところもあったのかと思いました。たとえば葵に「おばさん」と言われるシーンとか。
——原作2巻では、美星さんの妹も登場するわけですが、アオヤマの目線からするとどうしても「しっかりもののお姉さん」になってしまいますものね。
岡崎 この話は、小説では書けなかったと思うので、本当にコミカライズならではのお話だと思います。