完結巻となる第2巻が発売されたコミック版『珈琲店タレーランの事件簿』。今回は、コミカライズを担当した漫画家・峠比呂先生のもとを訪ね、お話を伺った。コミカライズをするにあたり、原作を誰よりも読みこんだ峠先生。そんな峠先生の語る『タレーラン』の魅力とは。
コミカライズ担当作家の語る、『タレーラン』の魅力とは?
——コミック版『珈琲店タレーランの事件簿』第2巻発売、そして第1巻の重版、おめでとうございます。
峠 ありがとうございます。
——コミカライズを担当された峠先生からみて『珈琲店タレーランの事件簿』は、どんなところが魅力の作品でしたか。
峠 好きなところはたくさんあるんだけど、まずキャラクターは魅力的ですよね。
——原作ファンの方の感想を見てみても、やはりキャラクターに言及しているものが多いですね。
峠 コミカライズをする時は、好きなキャラクターを作るところから始めるんですよ。多くは主役ですね。
けど『タレーラン』の場合、どのキャラも好きなんですよ(笑)。そのくらいキャラが魅力的。一番好きなのはアオヤマの親戚の小須田リカと、それを追っかける優男というか、だらしない男。
ただ、脇役を好きになるっていうのはよくあるんだけど、やっぱり主人公って好きにならなきゃいけない。もしくはとことん嫌いにならなきゃいけない。
——好きになるというのはなんとなくわかるのですが、主人公を嫌いになるというのは。
峠 嫌いになったところが魅力のキャラもやっぱり存在するんですね。嫌ったうえで、なんで自分はそこが嫌いなのかが重要なんです。逆にそこが魅力なことがあるので。読者はこのキャラ好きだけど、僕は嫌いってこともありますけど、それは主観の問題なので。
あと主人公とヒロインについては、思い入れを作るとこですね。キャラに思い入れができると、やっぱりその部分を出したくなるじゃないですか。
——コミック版を読み返してみると、原作につけくわえられたセリフやしぐさが多く見られますが。
峠 美星さんのことは、やっぱり読者みんなが好きであるように、僕も好きでありたい。自分にとってのキャラクターの魅力、「美星さんのここが好きだ!」っていうところが見つかると、自然に「これ足したいな」ってものが出てくる。
——当然描かなければいけないシーンがあり、ページ数の問題で原作から削られる場面、セリフもあるなかで、何かをつけたすというのは、なかなか勇気がいることかと思いますが。
峠 必要に迫られて、ということもありますよ。尺の問題なんですけど、ここを描こうって決めたシーンに、セリフが少なかったりする。そういうときはセリフを足さなきゃいけなかったりします。
ただ足りる足りない以外の部分では、キャラクターを魅力的に描くためには、たとえばひとつのしぐさであったりとか、そういうものをつけたしたくなる。それこそ連載が始まる前から。
——『タレーラン』には数多くのキャラクターが登場しますが、その1人ひとりに魅力を見出すわけですか。
峠 キャラの魅力、というか役割を考える意味では、原作ファンの反応も見ますよね。Amazonのレビューとか見たりするんですよ(笑)。あとはいろんな書評とかも。
ただそうしたものを読むのは、自分でひととおり原作を読んで解釈を固めたあとですけれど。
——世の中と自分のズレがないかの確認の作業ですね。
峠 そうそう、コミカライズでは、それが重要ですよね。そのうえで、みんなの思ったような描き方をしてあげるのか、それとも「そうきたか!」って変化球で挑むか。