365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月10日はおでんの日。本日読むべきマンガは……。
『おでん』第1巻
中西やすひろ 少年画報社 ¥571+税
おでん。
室町~江戸期における「煮込み田楽(でんがく)」の概念をバックボーンとする、煮物系の日本料理の偉大なる定番。
具の種類、つゆの味つけしだいで幅広いバリエーションをもち、家庭や屋台だけでなくコンビニエンスストアの商品という現代社会ならではの形でも身近な大衆食として人々に愛され続けている。
コンビニおでんといえば、むかしサークルKがおでん大好物な『おそ松くん』のチビ太とコラボしたCMソングありましたな……。
本日10月10日は、そんなおでんを記念する「おでんの日」。
甘い生姜みそが特徴の青森おでんを司る「青森おでんの会」が制定元で、10の「0」を英語の「O(オー)」で「お」、「10」=「テン」から「でん」にかけた日取りだ。
ちなみ、2月22日も「おでんの日」だったりする。
「2」を「ふ」と読んで「ふーふーふー」とおでんに息を吹きかけるシチュエーションに語呂をあわせた記念日で、こちらは8年ほど前に新潟ローカルのラジオ番組が提唱したものだ。
年に2度もおでんの日を設けるとは、みなさんおでんが好きですな~。私も大好きです。
さて、そのおでんをメインの題材としたマンガがある。
タイトルはそのものズバリ、『おでん』という作品。
作者は中西やすひろ。『Oh!透明人間』を代表作としてエロコメ分野での功績で有名だが、『ビタミンガール! 管理栄養士真理ちゃん』、『幸せレストラン』および本作のように、食にかかわるマンガでも光る仕事をしている。
舞台は、とあるつつましい商店街。
三十路の色っぽい女将が切り盛りするおでん屋「ゆきえ」のひとり息子・信と、そのお向かいで四十路のがんこオヤジが営む食堂「めしや源五郎」のひとり娘・桜は、親に内緒の恋人同士だ。
おでんの満足感、ごはんの安心感。お互いの店に足りないメニューがお互いの店にあるのに……と、2人は自分たちが結婚しておでんもごはんも自由に出せる理想の店を築こうと相談を重ね、人知れず逢瀬を重ねる。
親同士の因縁、店同士の競合、子ども同士の未来。
根深いしがらみをときほぐせる日はくるのか……と、下町を舞台にしたロミオとジュリエット風の人情劇になっている。
物語の合い間合い間に著者の好きなおでんの具ランキングが紹介されていたり(大根・玉子・もち入り巾着……王道だ)、トマトおでん等の興味深いメニューが描写されたりと、グルメマンガとしての楽しみもしっかり盛りこんであり、おでんの食べごたえのごとくしっかりダシのきいた読みごたえがある。
ああ、秋の寒さも迫ってくるし、おでんが食べたくなってきた……。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7