日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『図書館の騎士団』
『図書館の騎士団』第2巻
大須賀こすも 新潮社 ¥600+税
(2015年10月9日発売)
『図書館の騎士団』は、中世ヨーロッパ風の世界を舞台に、膨大な知を蓄えた小都市の存亡を巡るシリアスな戦記マンガ。本という叡智の結晶を護るための凄惨な戦いが描かれる。
図書館都市・スウェントヴァイトは、3つの騎士団に護持され、他国に情報を貸し出すことで報酬をえてきた。
国境守備を担当する「獅子の騎士団」の小隊長・イグナーツと、従妹で文書管理を担う「梟の騎士団」に任官されたアーデルハイトは、知を狙う諸勢力との戦いを余儀なくされる。
図書館を取り巻く政治背景は複雑でやや取っつきにくいものの、単純な善悪構造にはなっておらず、歴史好きを惹きつける。
戦上手で知られ、任務のためにはだまし討ちも辞さないイグナーツと、収蔵書の多くを記憶し、戦史の知識で参謀の才の片鱗を見せるアーデルハイト。2人の主人公の対比も鮮やかだ。
知は開かれてあるべきか、保護されるべきか。
現代にも通じるテーマをはらみ、今後の展開も気になる。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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