365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
7月18日は光化学スモッグの日。本日読むべきマンガは……。
『スペクトルマン』 第1巻
うしおそうじ(作) 一峰大二(画) 角川書店 ¥1,500+税
読者のみなさんは「光化学スモッグ」という言葉をご存じだろうか?
自動車や工場などから排出された化学物質が太陽光線(紫外線)の影響を受け発生する、「光化学オキシダント」という有害物質の大気中濃度が高くなることで生じたもや状のガスが光化学スモッグで、これを浴びた者は、目やのどの痛み、頭痛などの症状を起こすという。
1970(昭和45)年7月18日、東京都杉並区にある東京立正中学校・高等学校のグランドで体育の授業中、43名の生徒が目への刺激やのどの痛みなどを訴える現象が起こった。
のちの東京都の調査によってこれが光化学オキシダントによるものと判明、光化学スモッグは一躍衆目を集めることとなる。
市販のマスクでは防ぎづらく、乳幼児や高齢者、ぜんそく患者に被害を及ぼすことの多い“公害”は、広範囲に展開し対処法も「なるべく外出しない」という消極的なものしかなかったことから、当時のマンガでは怪獣被害にたとえられることも多かった。
その典型ともいうべき作品が『スペクトルマン』である。
東京都公害局の研究機関「公害研究所」に所属する公害Gメン・蒲生譲二は、公害モチーフの怪獣で地球征服をたくらむ悪の天才科学者・宇宙猿人ゴリから人類を守るため、ネヴィラ'71遊星からの指令によってサイボーグ戦士・スペクトルマンに変身する。
忠実な下僕・ラーを使役して仕掛けるゴリの狡猾で冷酷な作戦、そしてネヴィラ'71遊星の裁可がなければ変身できないなど、毎回変身するまで悪戦苦闘する蒲生の姿はほかのヒーローマンガにはないスリルを生み、ゴリ(と、公害そのもの)に翻弄される蒲生と地球人サイドにも様々なドラマを生み出した。
ちなみに本作は1971(昭和46)年1月に実写ドラマが放送され、のちの『帰ってきたウルトラマン』や『仮面ライダー』につながる第二次怪獣ブームあるいは変身ブームのさきがけともなった。
しかし放送開始当初の番組タイトルは、『スペクトルマン』ではなく『宇宙猿人ゴリ』。なんとヒーローではなく敵役の名が冠せられていたという、現在ではおよそ考えられない事実がある。
今回ご紹介した角川書店(現・KADOKAWA)の復刻版を読むと、なぜそんな事態になったのかが少しわかるはず。機会があったらぜひご一読いただきたい。
<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる、ゴリラメカ愛好家。『別冊宝島 「仮面ライダー」伝説の10人ライダー総特集』や、ただいま絶賛発売中の『手裏剣戦隊ニンニンジャー公式完全読本 天下無敵』にも参加しています。