日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『彼方のアストラ』
『彼方のアストラ』 第1巻
篠原健太 集英社 ¥438+税
(2016年7月4日発売)
『SKET DANCE』の篠原健太の最新作が登場。しかも宇宙漂流ものだというのだから、楽しくないわけがない! 緊張感あふれる宇宙の旅路も、合間合間にさしこまれるちょっとしたコメディで、さくさくとページをめくることができる。
カナタたちケアード高校の生徒たち9名は、惑星キャンプの最中に謎の球体に飲みこまれ、はるか遠い宇宙に放り出されてしまう。もといた場所までは5千光年。
入手した宇宙船・アストラ号で、水と食料の調達可能な惑星を経由しつつ、帰れるルートはたったひとつ。極限状態のなか、彼らは生き残ることができるか?
未知なる世界で必死で生き抜こうとするキャラクターの姿は、いつだって読者の胸を打つ。
『十五少年漂流記』、『漂流教室』、『無限のリヴァイアス』……小説、マンガ、アニメと媒体の違いはあれど、あらゆる場所にキャラクターは流されまくってきた。南海の孤島に遠い未来、そして異世界。
とりわけ空を見上げれば無限に広がる宇宙は、冒険の舞台にうってつけだ。
今、サバイバルものや、いわゆるデスゲームものは大流行中だ。あっさりと人が死ぬことが当たり前になりつつあるが、本作では今のところ人死になし。むしろ宇宙という極限状況のなか、誰かひとりでも欠ければ帰還は困難と思わせるストーリーは、かえって新鮮に思える。
様々なトラブルを経験したメンバーが、カナタをキャプテン(リーダー)に選び出す理由にも納得できる。ザックの宇宙船に関する技術に、シャルスの動植物の知識、それに一度見たものは忘れない「映像記憶能力」を持つアリエスなど、メンバーはそれぞれ秀でた部分を持っている。
カナタは運動が得意なだけの無鉄砲な男だ。それでも仲間のためにいつでも先頭を走ることができる“いざというときの行動力、決断力”を、メンバーは信頼している。
読者もそんなカナタがリーダーならば、この冒険を安心して見守っていける。
第1巻ラストで明かされた衝撃の事実は、第2巻以降の展開をグッとシリアスなものにしそうだ。
著者が『SKET DANCE』で見せたシリアスとコメディの抜群のバランス感覚をもって、本作もこれまでにないSF物語に仕上げてくれるのが楽しみだ。
<文・籠生堅太>
フリーの編集者、ライター。読むと元気になれるマンガが好きです。
Twitter:@kagoiki