話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『大市民傑作集 冬の美味しは、これだ! 編』
『このマンガがすごい!comics 大市民傑作集 冬の美味しは、これだ! 編』
柳沢きみお 宝島社 ¥590+税
(2017年1月21日発売)
人気小説家・山形鐘一郎、諸事情あって4畳半のボロアパート住まいする変わり者。クルマやギターなど趣味には惜しみなくカネをつぎこむかたわら、自炊や庶民の味に舌鼓をうち、決め台詞は「美味し!」。
それは世を忍ぶ仮の姿……とはいわないが、実質的な“中の人”は柳沢きみお本人。身にしみた体験や、思うところをもとに綴られたエッセイ的なマンガだ。
連載がスタートしたのが90年のこと。以降、掲載誌を転々と替えながらも足掛け25年以上にわたり、作者とともに歳を重ねる(主人公の年齢=作者の年齢)、柳沢の代表作のひとつとなった。
登場当時は45歳だった山形も、2015年に発売された『大市民 最終章』では67歳。すでに社会のしがらみや、マンガという枠さえ超越した境地に達しているともいえる。
が、そこまで手が届かない未熟者には、90年代に「40歳半ばだった山形」こそ一緒に飲み明かしたい相手だろう。
本作は、そんな山形が若かりし頃のエピソードをよりすぐったセレクション。しかも「冬の美味し」を語りまくる話ばかりで、読む前からノドがゴクリと鳴る!