日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『バットマン/ミュータント タートルズ』
『バットマン/ミュータント タートルズ』
ジェイムズ・タイニオン4世(作) フレディ・E・ウィリアムズ2世、ジェレミー・コルウェル(画)
中沢俊介(訳) 小学館集英社プロダクション ¥2,200+税
(2016年12月14日発売)
冗談みたいなタイトルだと思ってスルーした人! 待って! 案外これ傑作だから!
次元を超えてゴッサムシティに転送されてきてしまったタートルズの面々が、バットマンと組んでシュレッダー率いるフット軍団と戦う。
これだけ書くと冗談みたいだけど、バットマンの宿敵・ラーズアルグールもジョーカーも登場するし、ラーズアルグールの孫で、バットマンの実子でもあるダミアンまで活躍(このあたりの血縁関係がわからない人が、特に気にしないで読んでも楽しめる)。
単なるコラボという次元を超えた、愛のある特別編。
アベンジャーズとかジャスティスリーグとかのおかげで、作品の垣根を超えたコラボが珍しくなくなったのはいいんだけど、コレだよコレ!昔の『忍者ハットリくん+パーマン 超能力ウォーズ』に感じたお祭り感というか(これも一部にしか通じないかもしれないが……)。
皮肉分多めのアルフレッドや、ピザを食べるバットマンも見られる。
あいかわらずくたびれてるゴードン本部長、ペンギン、クロック、ポイズンアイビー、ベイン、ハーレイクインまで登場。タートルズの側も、ケイシー・ジョーンズやエイプリル、もちろんスプリンター先生が登場。ここには書ききれないほど、オールスターが描かれている。
いろんなキャラが出てきて楽しい!という話ではなくて、それだけ原作を読みこんで咀嚼(そしゃく)したうえでのコラボだってこと。バットマンに対して、「悪党を狩ることを楽しみにしてる変態ボンボン野郎」という定番の批判をラファエロもくちにする。
バットマンは、かつて自分を襲った悲劇、「犯罪通り」で起きた事件を彼に語る。
悪に、親しい者を殺されたり、親密な関係が破壊されるということ、それこそヒーローが戦わなければならない事柄なのだ。
その覚悟を確認しあうことによってバットマンとタートルズは結束する。アツい。
繰り返しになるけれど、「傑作」だからぜひとも手にとって見てほしい。
<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
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