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『傘寿まり子』 第2巻 おざわゆき 【日刊マンガガイド】

2017/03/09


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『傘寿まり子』


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『傘寿まり子』 第2巻
おざわゆき 講談社 ¥580+税
(2017年2月13日発売)


『東京タラレバ娘』など、崖っぷちアラサー女子ものが共感を集めているが、結婚して子どもを生んだら女の人生安泰なわけではもちろんなくて……。こちらはなんと、御年80歳のヒロインの物語。

作家としても女性としても充実した人生を過ごし、悠々自適の老後を送るはずが、家族とのトラブルでリュックひとつで家出をしたまり子さん。

元気でお金があっても、この歳では家族の同意なしに部屋も借りれず、社会的には「高齢ホームレス」と言われてしまう現実にショックを受けつつも、なんとか自分の居場所を見つけようともがく彼女を見ていると、たかだか30。40で「もう年だし」と言い訳して、いろんな可能性をつぶしている自分がつくづく恥ずかしくなってくる。

前巻末では、路頭に迷っていたところをかつての憧れの君・八百坂さんに助けられ、同棲を申しこまれたまり子さん。

新婚生活を謳歌し、連載エッセイでも回春パワーで編集の斉藤を驚かせるが、時代の流れで描く場所を失う危機に立たされ、さらには八百坂さんにも「暗い影」が忍び寄って……。

昨今ニュースでもよく目にする「高齢者の恋」といった言葉からはこぼれ落ちてしまう、当事者にしかわからない日常の諸問題をリアルに細やかに描いてみせる真摯な眼差しは、テーマこそ違うが『あとかたの街』『凍りの掌』といった著者の既発作にも通じるもの。

「恋も仕事も一生現役」と煽られる時代だが、そんな現実を知れば、老齢者が一生現役を実現するのは精神的にも肉体的にも並大抵のことではないという現実がズシリと重くせまってくる。

だからこそ、新作小説を描こうと奮起し、八百坂さんとともに取材旅行に出かけたまり子さんを襲う、あるショッキングな展開には、またしても絶妙なテーマをブッコんできたな~と感心しつつも絶句。

はたして、まり子さんはどうなるのか? 次巻が待ちどおしい!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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