365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月16日は団鬼六の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『美少年』
小野塚カホリ(著)団鬼六(作) マガジン・マガジン ¥857+税
今日4月16日は、日本の官能小説の第一人者である団鬼六(だん・おにろく)の誕生日である。(戸籍上では9月1日とのこと)
作家以外にも脚本家、出版人と多彩な面を見せた彼は、2011年に79歳で亡くなるまで放埒な人生を送り続けた。
代表作は『花と蛇』。何度も映画化され、アニメやゲーム、舞台にもなっている。
本日ご紹介するのは、数ある団鬼六作品のなかでも人気のある私小説『美少年』のコミカライズ。
さらに著者は、その独特なタッチとエロティックな表現に評価も高い小野塚カホリ。
もう良作間違いなしの太鼓判である。
時は昭和20年代後半。
K学院大学に通う「私」は軽音楽部に所属し、ジャズバンドのリーダーをやっていたが、その練習中に風間菊雄という青年と出会う。
彼は若松菊香と名乗る日本舞踊の名手で、若松流の宗家の御曹司。
「私」は彼を見た瞬間、理想の女だと思ってしまう。
菊雄はそれくらい図抜けた美貌で、妖しい雰囲気を持つ美少年だったのだ。
あっという間に距離を縮め、まるで恋人同士のようにつきあい始める2人。
だが「私」には恋人がいるうえに、また菊雄に対してよからぬ興味を抱く悪友もいた。
2人の関係は徐々に歪み始め――。
作品全体に香る、独特の隠微さ。当時の雑多な風俗文化の魅力。
嫉妬に狂う清姫を演じる菊雄の、白塗りの肌と赤い唇、その凄絶な美しさ。
どのページをめくっても、どこか背徳感を感じてしまうエロティックな雰囲気。
官能小説のコミカライズとはかくあるべき、という作品だ。
さらにこれが私小説であることを考えると、また違う意味で圧倒される内容なのだ。
オビのアオリ文には「ボーイズラブ」とあるが、現在のBLとは一線を画している。
いわゆるJUNEもの、耽美もの、美少年もの。
もしくは衆道ものと捉えたほうが妥当だろう。
美しくもせつなく、ほろ苦い物語。しみじみ味わっていただきたい。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。 相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」