365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
4月27日はジョージ秋山の誕生日。本日読むべきマンガは……。
『浮浪雲』 第109巻
ジョージ秋山 小学館 ¥552円+税
4月27日は、漫画家・ジョージ秋山の誕生日(1943年)。
70年に発表された『アシュラ』『銭ゲバ』は強いメッセージ性を秘めた怪作・問題作のはずなのに柔らかな描線、わかりやすいセリフ回しでサラリと読ませるポピュラリティを持つ。発表から50年以上を経てアニメ映画化、また実写ドラマ・実写映画化されるなど普遍的な人気を誇っている。
『花のよたろう』のようなギャグマンガ、お色気いっぱいの『恋子の毎日』『ピンクのカーテン』、またカルト的人気を誇り語り継がれる『海人ゴンズイ』『シャカの息子』など作品をあげればキリがないが、代表作といえば1973年から現在まで連載が続く『浮浪雲(はぐれぐも)』だ。
舞台は幕末。主人公の“雲”は東海道の宿場町・品川で問屋を営んでいる。家族は妻・おカメ、長男・新之助、長女・お花の3人。仕事はそっちのけで昼日中からぶらぶら、酒と女が大好きで、町中で「おねえちゃん あちきと遊ばない。」と声をかけるのが日常茶飯事だ。
雲のモットーは「小事を気にせず流れる雲のごとし」。ぱっと見はただの怠け者のようで、じつは人望が厚い彼が、家族や市井の人々と交わす言葉のなかにはハッとするような至言が満載。決して押しつけがましくなく優等生的ではなく、気持ちを楽にしてくれる考え方が詰まっていて、全編これ名言集といっても過言ではないだろう。
この5月には単行本第110巻が刊行予定。作中にははっきり年齢は記されていないし雲の外見も変わってはいないが、このところ本作に“時の流れ”を感じさせる変化がかいま見えると思っていた矢先、「ビッグコミックオリジナル」(2017年8号・4/5発売)でなんだか気になるシーンに遭遇してしまった。
名もない2人の男たちが浜辺でたまたま雲の後ろ姿を見かけ、彼を評して「浮世離れした人らしい」「生きてることを忘れちゃってる人」というのだが……なんとも意味深な言葉である。
もしや、雲はもうこの世にいなかったりするのかも!? 「流れる雲のごとし」の人生観のその先に、著者は死生観を提示しようとしているのではないだろうか。
あくまで筆者の想像にすぎないが、今、あらためて無性に気になる作品なのである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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