『F-エフ-』第1巻
六田登 小学館 \485+税
9月8日は、モータースポーツのスター選手2人の誕生日。そのひとりがスウェーデン人のステファン・ニルス・エドウィン・ヨハンソン(1956年生まれ)、もうひとりが日本人の鈴木亜久里(1960年生まれ)で、年と国は違っても、F1ドライバーがそろって生まれた日ということになる。
鈴木亜久里は、ヨハンソンとも戦った中嶋悟に次ぐ、日本人2人目のF1フルタイムドライバー。
1988年、代役でのスポット(単発)参戦で、日本グランプリにおいてF1デビューを果たしている。その2年後の同グランプリでは3位に入賞して、日本人としてはもちろん、アジア人として初の表彰台に登ることとなる。
その翌年、鈴木と同じくスポット参戦で日本グランプリに出場した日本人ドライバーがいる。彼こそ、ヨーロッパF3000の風雲児で、「なんぴとたりともオレの前を走らせねェ」の決め台詞で知られた赤木軍馬!
そう、これはもちろんマンガのなかの話。赤木軍馬は六田登『F-エフ-』の主人公だ。父に反発して、フォーミュラレースの世界に飛び込んだ軍馬。彼はその負けん気の強さと卓越したレーシングセンスで、大きく成長していく。
男のドラマとしても面白い一作だが、現実とリンクさせて描かれていて(鈴木や中島も登場!)、80~90年代のフォーミラレースの盛り上がりも知ることができる。
F1にちなんだ本日にはぴったりの作品だ。
鈴木はのちにF1オーナーに転身したが、軍馬はどうなったのか。興味のある人は、ぜひ『F』と続編の『F REGENERATION 瑠璃』を読んでみてほしい。爆音で低く深く響く興奮と感動が待っている。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Autumn」が9月17日に発売に。『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』パンフも手掛けています。