365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
5月8日は松の日。本日読むべきマンガは……。
『このマンガがすごい!comics 「おそ松くん」とアカツカ怪作劇場』
赤塚不二夫 宝島社 ¥690+税
日本を象徴する樹木といえば何?
……と尋ねられたら、もしかすると「桜」と答える人が多いかもしれない。
しかし「松」も忘れてはいけません。松のある風景や盆栽は、まさに日本の象徴そのもの。英語でも、日本に広く分布するアカマツとクロマツはそれぞれ「Japanese red pine」「Japanese black pine」と呼ばれているほど、「松といえば日本」というイメージが強いのである。
本日5月8日はそんな松にまつわる記念日で、その名もズバリ「松の日」。
これは「日本の松の緑を守る会」の提唱によって1989年に制定されたもので、1981年の同日に初めてこの会の全国大会が開かれたことに由来している。
ちなみに東アジアにおいて、松は「神の降りてくる樹」とされることも多いありがたい樹木。中国では仙人と松はワンセットだったりするし、日本でも天女の羽衣伝説でもっとも有名なのは静岡県・三保の松原に伝わるものであり、当然、羽衣をかけたとされるのは松である。
そんなありがたさゆえ、松は「長寿の象徴」としても知られるわけだが、マンガの世界で長寿人気を誇る松といえば……もちろん『おそ松くん』であります!
いうまでもなく、アニメ『おそ松さん』によって一大ムーブメントともいえるほど人気が爆発。そして先日ついに2期の制作が正式に発表されたことによって「放送開始日いつよ!?」と気もそぞろなファンも多いことかと思いますが、今日は「松の日」ということで、あらためて赤塚不二夫による原典の『おそ松くん』に触れていただきたいと思う次第。
その『おそ松くん』は様々なかたちで単行本がリリースされているのだが、数あるなかでも本作および赤塚不二夫の持つ突き抜けた「ヤバさ」を堪能できるのが『「おそ松くん」とアカツカ怪作劇場』だろう。
なにせタイトルに「怪作」とある以上、フツーではない作品が集められているわけだが、その過激さと異常性は常識のナナメ上どころではない。
アニメの『おそ松さん』もかなり大胆かつ実験的ともいえる演出が人気の要因のひとつではあったが、まさにその種は、今から50年ほども前に描かれた赤塚作品の数々に蒔かれていた(あまりに過激すぎて、当時はアダ花に終わっているものもあるが……)ことが、この単行本を読めば如実にわかるだろう。
なお、巻頭作品となる『おそ松くん』のエピソード「おたまじゃくしはファソラシド」は、原稿の状態がそのまま確認できる状態で収録されているのもたいへん貴重。
六つ子の顔にコピーが貼られているという事実には驚く人も多いと思うが、これは手抜きではなく「6人の顔の輪郭を同じにしたい」というこだわりによるもの。
そして本来は6人がまったく見分けがつかないキャラであり、それ自体がギャグだったということも、あらためて『おそ松さん』から入ったファンにも知っておいていただきたいのであります。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。