日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『花部長(52)と心乃ちゃん(17)』
『花部長(52)と心乃ちゃん(17)』 第1巻
吟華 KADOKAWA ¥580+税
(2017年4月10日発売)
妻と離婚、娘と別居して3年。
元妻には彼氏ができ、娘も連絡するに及ばずとの一方的な通告によって、出張から帰ったばかりの橋田工業(株)の部長・花誠之介(はな・せいのすけ)52歳は人生のドン底にたたきこまれた。
離れた娘との連絡手段にとせっかく買い替えたスマホも無用の長物となり果てて、荒れに荒れる花部長はウサばらしにゲームセンターへ足を運ぶ。
太鼓のリズムゲーム、ガンシューティングで体力を消耗し、あげくの果てにクレーンゲームで散財してしまった花部長にひとりの女子高生が話しかけてきた。
彼女の名は心乃(ここの)。
花部長に替わってクレーンゲームに挑戦するもそんなに上手ではなく、話を聞いてくれるかと思いきや夕食の竜田揚げに狂喜する、びっくりするほどマイペースガールなのだった。
バツイチの腰痛持ちでしかも無趣味というオジサンがちょっと変わり者の女子高生と出会い、マイペースすぎる彼女に翻弄されまくる超・歳の差ラブコメ……いや、この言葉は正確ではない。
なぜなら花部長は近来まれに見るカタブツで、心乃ちゃんに恋愛感情めいたものを抱く兆しすら見えないからだ。
そうまさに、「歳の差フレンドシップコメディ」=「フレコメ」と呼ぶべきであろう。
年齢差がある男女のせつない恋愛というよりも、くたびれたオッサンがたまたま出会ったJKに振りまわされ、ツッコミを入れながらも、ときにはげまされ、ときにいやされる日々を楽しむべきマンガ。
オッサンには理解不能なマイブームや、もはやその文化差は宇宙レベルの味覚だったり。
花ちゃん(心乃の命名)の日常生活にズカズカ踏みこんでくるかと思いきや、ぱったりと連絡をよこさなくなるまるでネコのような心乃の言動は、いちいちツッコみがいがあるものの、そこにはちょっと不器用にも見える優しさがあって、読む者にすらいやし効果バツグン!
若さをカネでどうこうしたいと考えてるようなうす汚い欲望にまみれたオトナたちにぜひ読んでいただきたい、イマドキめずらしくピュアで気分がアガるマンガなのである。
<文・富士見大>
花さんについつい感情移入してしまうロートル編集・ライター。ただいま絶賛発売中!! の『俺たちの仮面ライダーシリーズ 電王 10th ANNIVERSARY』と、昭和特撮の秘話がたっぷり掲載の『特撮の匠 昭和特撮の創造者たち』参加。