日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『鳶田くんと須藤さん』
『鳶田くんと須藤さん』 第2巻
理央 秋田書店 ¥600+税
(2017年5月8日発売)
高校2年生の須藤凪子をつけまわす、ちょっとイケメンだけど、だいぶ気持ち悪い男、鳶田。
言いわけのできないストーカーにして、ハードコアすぎるヤンデレ。
「ヤンデレは話が通じない」「ヤンデレは自分のことを棚にあげる」「ヤンデレの嗅覚は鋭い」。
序盤は“ヤンデレあるある”をネタに、鳶田の異常行動を描いたコメディだった。
ところが、第1巻後半からガラッと様子が変わってくる。
須藤の友だち・藤本梨果が鳶田から彼女を守ろうとし始めた。
鳶田との牽制合戦は、非常に危険だ。
鳶田の謎の交流相手・若村も登場。
彼がただのヤンデレストーカーではないことが見え始める。
完結巻の第2巻では、鳶田がなぜここまで執拗にストーキングをするのか、理由が判明する。
須藤はいつも顔に絆創膏を貼っている、ブスではないけれども、ムスッとした三白眼で美人とはいいづらい絶妙なデザインのキャラだ。
それらの伏線も、すべて回収されていく。
物語で描かれるのは、2人の共依存。
鳶田は想像以上に、人間としてアウトな行動を取っていたことが明らかに。
何もかも投げ打ち、須藤のために動いているさまは、同情してはいけないレベル。
それを知ったうえで、鳶田をつい許してしまう須藤。
ストックホルム症候群にかなり近い状態だ。
惹かれあったことで、少し幸せに近づいたように見える2人。
だが、2人が狂気的な方向に進んでいるのを、そしてもう止められないのを、梨果からの客観的視点で描いている。
最後はハッピーエンドであり、バッドエンドでもある。
ここはぜひ読んでたしかめてほしい。
依存しあっているから離れられない。心の穴を埋めあっているようで、埋まっていない。
2人の、愛とはいいづらい関係のゆく先は、今は地獄のようにしか見えない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」