365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月19日は朗読の日。本日読むべきマンガは……。
『花もて語れ』 第1巻
片山ユキヲ(著) 東百道(朗読原案) 小学館 ¥543+税
NPO法人の日本朗読文化協会は、2001年に6月19日を「朗読の日」と制定した。
なぜか?
いつも当コーナーを愛読しているみなさんならおわかりですね。
「6(ろう)」「10(ど)+9(く)」という簡単な謎解きです。「ど」≒「と」→「10」って部分が引っかからないでもないけれど……ま、とにかく本日は例によって語呂あわせで朗読の日なのである。
協会による朗読イベントなども毎年催されているようなので、気になる方は要チェックだ。
そんな朗読の日にページを繰りたいマンガといえば、片山ユキヲの大名作『花もて語れ』しかないだろう。
物語は、都会から田舎に引っ越してきて以降、方言の壁もあって引っ込み思案に拍車をかけていた小学1年生の佐倉ハナが、朗読のおもしろさに出会ったことで視界が開けていく瑞々しいエピソードから幕を開ける。
十数年後、ハナは就職を機に上京、あいかわらず人見知りで口下手だが、朗読と再会したことで人間的に大きな成長を遂げていく。
朗読をマンガに変換する大胆な演出の鮮烈さ、取りあげる名作文学の解説と解釈のおもしろさ、淡い恋愛模様や静かに熱いライバル関係、そのすべてが丁寧に丁寧に紡がれ、読む者の胸に迫り、ハナの朗読が紙面から聴こえてくるかのような錯覚に陥る。
これはほかの作品では味わえないマンガ体験だ。
新年度を迎えてから2カ月チョイ。
五月病を引きずり、いまだ人間関係でギクシャクして悩んでいるそこのアナタ。
朗読の日に当コーナーを目にしたのも何かの巡りあわせ。
『花もて語れ』を手に取り、ハナのセリフを声に出して読んでみてはいかがだろうか。
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。