日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『すこしふしぎな小松さん』
『すこしふしぎな小松さん』
大井昌和 白泉社 ¥600+税
(2017年5月19日発売)
「あたしなんて全然SF詳しくないですから!
まだ千冊も読んでないあたしなんて、
まだまだ…
大体 原文も読んだこともないですし」
SFファンの女の子・小松さんと、そんな小松さんに想いを寄せる男子・宮内くんの2人を中心にSFとそれを取り巻く人々の世界を描いたのが『すこしふしぎな小松さん』。
そもそも「SFにくわしい女子高校生」という時点でSFというか、SFにしてもリアリティがない、考証不足、非現実的すぎる、という気がしないでもない。
しかし、この小松さん、けっこうなSF読みのはずなのにやたらと謙遜するところとか、面倒くさいところは、節々の言動やらなにやらがカワイイ女の子ってところをのぞけば妙にリアルである(しかし批評家・東浩紀のアジに煽られる若気の至りっぷりとかはさすがにリアルすぎてまったく他人ごとでないので勘弁してほしい。やめておけ。確実に人生を誤るからやめておけ)。
巻末に掲載された著者による「SF大会」レポも、偉い作家の先生が、一般参加者に混じってごく普通に参加しているというSF界隈の独特の雰囲気を伝えていてよい。
実際につきあったりすると面倒くさいSFファンも、創作のなかで眺めるにはちょうどいいかもしれない。気が向いたら生態観察のつもりで手に取ってほしい。
<文・前島賢>
82年生、SF、ライトノベルを中心に活動するライター。朝日新聞にて書評欄「エンタメ for around 20」を担当中。
Twitter:@maezimas