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『わたしのかたち 中村佑介対談集』 中村佑介 【日刊マンガガイド】

2017/08/31


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『わたしのかたち 中村佑介対談集』



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『わたしのかたち 中村佑介対談集』
中村佑介 青土社 ¥1,300+税
(2017年6月21日発売)


マンガでも絵画でもなく、デザインや広告にしてポップアートでも現代美術でもあるもの。
そんなふうに括ることもできるイラストレーションとは、はたしてどんなものなのか。

本作『わたしのかたち 中村佑介対談集』は、今年活動15周年を迎える人気イラストレーター・中村佑介の対談集。13人のクリエイターたちと、それぞれのテーマで語りあっている。
書籍のカバーでは『謎解きはディナーのあとで』(東川篤哉)、『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦)、CDジャケットではASIAN KUNG-FU GENERATION、さだまさしなどを手掛けている著者。
その“アジカン”のボーカル&ギターの後藤正文、さだも登場しているが、コミック好きが注目なのはやはり漫画家との対談だ。
漫画家は6人で、山本直樹、わたせせいぞう、林静一、江口寿史、石黒正数、奥浩哉とトークを繰り広げている。

イラストレーションとはなんなのかという直球のテーマを語るのが、漫画家でありイラストレーターでもある江口。絵に関する話だけでなく、現代のイラスト事情、イラストレーター事情にも話が及んでいるのが興味深いところ。
また、石黒と中村はファンには知られているように大学の同窓生にして友人で、対談のタイトルも「同級生・友達・ライバル!」。 2人のこれまでとその間柄に触れることができる。
そして、林静一。中村が大きな影響を受けている林との対談は、中村自身のルーツも深く知れるテキストになっている。

中村が対談相手の漫画家とその絵をどう見てきたか、その漫画家が中村の仕事をどう見ているのかを知ることができるのも一興だが、やはり際立つのは中村佑介という描き手の特異さ。
文字どおりのイラストレーターながら、その絵、その仕事の受け止められ方や広まり方はたんなるイラストレーションの枠を超えたものにもなっている。

マンガでも絵画でもなく、デザインや広告にしてポップアートでも現代美術でもあるもの。
対談内でもイラストはそうしたものとして語られているが、イラストに特化した中村は結果として新たなイラストの在りさまをこの時代につくりだしていて、提示しているのかもしれない──そんなふうにも感じさせる対談集。現代の職人たちの語りあいとしてもおもしろい。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。

単行本情報

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