日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『聖血の海獣』
『聖血の海獣』 第1巻
釣巻和 講談社 ¥581+税
(2017年11月7日発売)
『くおんの森』『のの湯』の釣巻和が描く新作は、海の巨大な獣を追う少年を描いた、海洋アクションファンタジー。
少年の武器は、銛(もり)1本だ。
銛打ちのジュールは、大人たちの船に乗り、巨大な海獣・レヴィアタンを狩り続けている。
亡くなったの父親とともに、銛打ちを続けてきた、船上ではベテランのジュール。
しかしまだまだ彼は幼い。海のなかに飛びこんでしまう無謀さに、まわりの人はヒヤヒヤ。
レヴィアタンはかつて、人類が倒すことができない存在だった。
それが今は、特殊な鉄の製法で倒すことができるようになり、皮や油を利用するようになった。
人間のなかには、レヴィアタンは神で、倒すべきではないと考える人々も存在している。
自然と人間のバランスが、逆転しつつある時代。ジュールは、ただひたすらにレヴィアタンを殺し尽くすことしか考えていない。
ひとりの可憐な見た目の少女・マナが登場してからが、うなぎのぼりにおもしろくなるところだ。
ストーリー自体は人類文化レベルの問題を扱い、ハードでストイック。ジュールも狩り以外にまったく興味を持たない。
しかし作中唯一の女性・マナに対して、男たちの優しい内面がボロボロ出始める。下心のない、大人の親切心だ。
ファンタジージュブナイルにおいての少女は、救うべき、守るべき存在として少年を成長させる役割がある。
同時に場のルールを支配し、物語の信念を捻じ曲げる力を持つのも、少女だ。
マナは幼い身なりでいて、砂の国の王の嫁。出会って早々にジュールにキスをしているが、最初から恋愛対象外という珍しいキャラクター。
「少女の姿は罪深い」という作中のセリフが重い。
ねじれゆく世界と怪しい少女の前で、少年がどのくらい銛のようにまっすぐ進めるのか、しかと見届けたい。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」