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『ここから先はNG』第1巻 松田裕子(原)和泉みお(著)【日刊マンガガイド】

2014/10/30


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『ここから先はNG』第1巻
松田裕子(原)和泉みお(著) 講談社 \429+税
(2014年10月10日発売)


理数系の教科が全滅するなどして高校を留年してしまった主人公の花垣波瑠(はながきはる)が、親に脅されて転校した先は、なんと同級生が全員がイケメンの芸能科クラスだった……という逆ハーレム作品。
この逆ハーレム状態が売りの作品かと思いきや、早々にお相手役の清泉蓮(きよいずみれん)とのカップリングが成立……するのかと思いきや、なんと「恋人のフリをしてくれ」と言われてしまう。

波瑠は男アレルギーというか、なれなれしい男に拒否反応をしめす普通の女の子。対してややエキセントリックな蓮は女性アレルギーで、女性に触れると体調を崩してしまうという設定。
イケメン俳優としてやっていくためにはそれではいけない、と思った蓮が女性に慣れるためにとる行動は、なんと突然のキス(作中ではキステロと言われている)。それ完全にセクハラだからね。イケメンでもダメだからね……。

ともあれ、そのキステロなどの蓮からの過剰なスキンシップに対して、波瑠は母から与えられた大きな三角定規で対抗。
ラブコメのギャグ要素としては、けっこうエキセントリックな気がするんだが、何度も登場してくるうちにだんだん慣れてくるのが不思議。むしろ三角定規が登場しないときには物足りなさすら感じるようになる。

波瑠は「男アレルギー」「ピンチになると三角定規で戦う」といった性格づけがされているのだが、もうひとつ「予定にないことが嫌い」というキャラ設定がある。蓮に誘われて行くデートの場面でこの設定が効果的に使われているので要チェック。

作品は全体的にご都合主義的な展開ではあるのだけれど、それがよい。何より波瑠の母である花垣可憐(はながきかれん)の存在が大きい。
元・敏腕芸能プロデューサーであり、蓮と波瑠の関係を取り持つなど陰に陽に活躍している。先述のとおり、波瑠が護身用に持ち歩いている大きな三角定規もこの母親から与えられたものだ。

要素が詰め込まれ過ぎているとも言えるのだが、読者を飽きさせない工夫でもあるのだろう。波瑠が蓮に振りまわされるように、読者も物語の展開に振りまわされるような感覚を楽しめる。続きが楽しみな作品だ。



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn

単行本情報

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