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『火線上のハテルマ』第4巻 せきやてつじ 【日刊マンガガイド】

2014/11/20


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『火線上のハテルマ』第4巻
せきやてつじ 小学館 \552+税
(2014年10月30日発売)


強くなりたいか?
この問いから物語は始まる。

主人公の梶は、現場で通り魔を止められず、8人もの死傷者を出してしまった元警官。
その通り魔事件が国内で報道され、アメリカへと厄介払いされることに。行った先のアメリカで、異様に強いハテルマという男と出会って……というのがあらすじ。

作品のタイトルにある火線とは、銃器の弾が飛ぶラインのこと。
なんとなくラノベっぽいタイトルの響きとは対照的に、ストーリーは骨太でハードなリアル路線。「それはご都合主義なのでは?」という展開すらも、もしかしたらこういうこともあるかもしれない、と思わされるほど、そのリアリティには説得力がある。

そのライン=火線のなかで、戦うのが、プロのボディガード。そのプロのボディガードであるハテルマと出会った梶は、強くなりたい一心で、ハテルマたちのチームに加入することを頼みこむ。
本作は、不甲斐ないはずの梶が、ハテルマたちボディガードチームに入って成長していく物語でもある。

本作のテーマはおそらく勇気。
身のほどを忘れて暴れるような蛮勇ではなく、自分の弱さをねじふせて強くなり、かつ守られるべき者を思いやる優しさを兼ね備える勇気。それを梶が体現していくように作品は描かれている。

1巻ではアメリカでギャングから少年を守り、2巻ではパリで人身売買を調査するジャーナリストを守り、3巻からは内戦中のシリアから独裁政権から命を狙われる人々を守ることになった梶とハテルマたちボディガードチーム。

つづく今回の第4巻では、無敵なくらい能力の高いハテルマの、血に汚れていそうな暗い過去を知る謎の組織の姿が徐々に浮かび上がり、他方で梶はボディガードの甘くない現実にまたひとつ気づかされることに。

本作の作者は、木葉功一原作の『ジャンゴ』そして料理マンガ『バンビ~ノ!』で高い評価を得た「せきやてつじ」。
濃厚な感情や情景の表現が、主題と見事にマッチしている傑作です。続きが気になる!



<文・永田希>
書評家。サイト「Book News」運営。サイト「マンガHONZ」メンバー。書籍『はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド』『このマンガがすごい!2014』のアンケートにも回答しています。
Twitter:@nnnnnnnnnnn

単行本情報

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